新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2018年6月29日

「渾」の文字は「常用平易な文字」にあたるか

「渾身の力を込めて」とか、「渾々と清水が湧き出る」とか、「渾」の文字はさまざまな場面で使われていますね。力強さや勢いを感じさせるこの文字をわが子の名前に使おうと思う人がいても不思議ではありません。

ところが長男「渾」君の出生届を戸籍管掌者である区長に提出したところ、不受理とされ、出生届を受理することを求める申立てを家庭裁判所に行って勝訴判決を得たところ、区長が即時抗告をし、抗告審の東京高裁が抗告を棄却するというケースがありました(東京高裁平成29年5月16日決定)。

なぜ、区長は出生届を不受理にしたのか。戸籍法50条1項には、「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」とあり、2項で「常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める」とあるが、「渾」の文字は戸籍法50条や戸籍法施行規則60条に基づく文字でない、つまり「常用平易な文字」でないというのがその理由です。

原審の東京家裁は、「渾」は社会通念上明らかに常用平易な文字であると判断したのに対し、抗告人(区長)は、戸籍法50条の委任を受け施行規則60条が定める現在の常用漢字及び別表第2の漢字以外の漢字は、社会通念上明らかに常用平易な文字とは認められないと反論しました。

これに対して、東京高裁は、次のように述べて「渾」君の親を勝訴させました。常用平易な文字かどうかは、社会における現実の文字の使用状況や国民の意識・理解によるものであり、文字の使用状況や国民の意識・理解は国民それぞれの日常に関わることであって、これを完全に把握することは容易ではなく、現に制定されている施行規則の内容が完璧無謬であることはできない。文字の使用状況や国民の意識・理解は変化が激しいから、十分な検討を経て施行規則が制定されても、時間の経過とともに、実態との間に僅かな不一致が生じてくることも当然に起こり得る。「渾」の文字は、施行規則60条の別表第2の平成16年改正には入っていなかったが、現時点では社会通念上明らかに常用平易な文字であると認められる(この点は、パソコン等で「こん」と入力すれば、たやすく変換される等、様々な観点から詳しく検討しています)。同条はその限度で戸籍法50条1項、2項の委任の趣旨に反しており違法である。

このような複雑な判断を経て、「渾」は常用平易な文字であると認められたのです。

 

弁護士 中村周而

著者:

中村 周而さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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