新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2018年9月18日

名誉を毀損する陳述書の作成者に慰謝料請求は可能か

民事事件で、相手方から書証として出された陳述書を見た依頼者から、「自分の名誉を毀損するような事実が書かれているが、見過ごすことができない。陳述書を作った人に慰謝料請求をしたい」という苦情を聞くことがあります。

陳述書に事実と異なる内容が書かれ、それが書かれた人の名誉を毀損するような場合であっても、裁判所は直ちに陳述書の作成者に不法行為に基づく損害賠償を命じてはいないようです。最近の判例(大阪地裁平成30年1月11日判決)は、次のように論述して違法性の判断基準を示しています。

民事訴訟の陳述書は、主尋問を一部代替又は補完する機能を持っているから、その内容は真実であることが要請され、虚偽の内容の陳述書を作成して実態の解明を阻害することは許されない。しかし、陳述書は、作成者の法廷での供述内容を事前に相手方に明らかにする証拠開示機能(反対尋問権保障機能)も持っていることを踏まえると、真実性の要請のみを過度に重視すべきではない。

仮に、訴訟で書証として提出された陳述書に、当事者の社会的評価を低下させる事実や名誉感情を害する事実が記載されている場合に、それが裁判所に認定されなかったときや相容れない事実が認定されたときに、陳述書を作成して書証として提出する行為が直ちに違法と評価されるとすれば、作成者は自己の認識にかかわらず裁判所によって認定されることが確実と思われる事実しか記載しなくなるから、前述した陳述書の各機能が失われ、当事者の立証活動に大きな萎縮的効果が生じ、ひいては実態の解明を困難にするなど、民事訴訟の運営に支障を来すことが容易に生じ得る。

大阪地裁判決は、このように論じた上で、「当事者等の社会的評価を低下させる事実や当事者等の名誉感情を害する事実が記載された陳述書を作成し訴訟において書証として提出する行為は、作成者が陳述書記載の当該事実の内容が虚偽であることを認識しつつあえてこれを記載して行った場合に限り、違法性を帯びる」という判断基準を示しています。

この事例で裁判所は、セクハラ被害の記載のある陳述書を作成した被告が、「本件セクハラ被害等の事実が認定されなかったことを認識していたとしても、本件陳述書の内容が虚偽であることや被告がそれを認識した上で本件陳述書を作成したと認めるに足りない」として損害賠償を求める原告の請求を棄却しています。

弁護士 中村周而

著者:

中村 周而さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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