新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2018年10月26日

宅配便の荷物の紛失・破損についての責任(判例紹介)

宅配便で荷物の発送を依頼したが、運送業者の過失により、荷物が紛失・破損してしまった場合には、運送業者に損害賠償責任を求めることになります。

その場合、荷送人(送り主)と運送業者の間には契約関係が認められますから、その法的な関係は、約款によるのが原則です。おそらく読まれたことがない人が多いと思いますが、宅配便にはそれぞれ約款があり、通常の宅配便ですと、損害賠償の額は30万円が上限であるなどと定められています。ただし、運送業者に故意や重過失がある場合には、上限額を超えて賠償することが定められていることが多いようです。

それでは、たとえば、その荷物が荷受人(送り先)に所有権があるなどの理由で(たとえば、ある商品の修理を依頼し、修理業者から修理した商品を送ってもらった場合)、荷受人は、宅配業者に対して、損害賠償請求をすることができるでしょうか。その場合には、約款は適用されるでしょうか。

この点について、最高裁平成10年4月30日判決は、運送業者に故意過失があれば、荷受人に対して、不法行為責任が生ずることを前提としつつ、その賠償額について、次のように判断しました。

「宅配便は、低額な運賃によって大量の小口の荷物を迅速に配送することを目的とした貨物運送であって、その利用者に対し多くの利便をもたらしているものである。宅配便を取り扱う貨物運送業者に対し、安全、確実かつ迅速に荷物を運送することが要請されることはいうまでもないが、宅配便が有する右の特質からすると、利用者がその利用について一定の制約を受けることもやむを得ないところであって、貨物運送業者が一定額以上の高価な荷物を引き受けないこととし、仮に引き受けた荷物が運送途上において滅失又は毀損したとしても、故意又は重過失がない限り、その賠償額をあらかじめ定めた責任限度額に限定することは、運賃を可能な限り低い額にとどめて宅配便を運営していく上で合理的なものであると解される。右の趣旨からすれば、責任限度額の定めは、運送人の荷送人に対する債務不履行に基づく責任についてだけでなく、荷送人に対する不法行為に基づく責任についても適用されるものと解するのが当事者の合理的な意思に合致するというべきである。けだし、そのように解さないと、損害賠償の額を責任限度額の範囲内に限った趣旨が没却されることになるからであり、また、そのように解しても、運送人の故意又は重大な過失によって荷物が紛失又は毀損した場合には運送人はそれによって生じた一切の損害を賠償しなければならないのであって(約款略)、荷送人に不当な不利益をもたらすことにはならないからである。」「荷受人も、少なくとも宅配便によって荷物が運送されることを容認していたなどの事情が存するときは、信義則上、責任限度額を超えて運送人に対して損害の賠償を求めることは許されないと解するのが相当である。」

要するに、荷受人も宅配便を利用することを容認していたときには、荷受人と運送業者の間には契約関係がないけれども、約款の趣旨を及ぼすべきであり、原則として30万円の上限額までしか賠償義務がないという判断をしたことになります。

なお、このような場合、荷受人(送り先)と荷送人(送り主)の法的関係がどのようになるかは、また別の問題として検討する必要があり、ケースバイケースで難しい問題が生ずることがありますので、注意が必要です。

 

弁護士 近藤明彦

著者:

近藤 明彦話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の方の納得を最優先にし、依頼者の方から感謝されることを目標に頑張っています。個人的には、以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が非常に多く、そのことが大変に励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えられるからです。

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