新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2017年2月7日

見直したい「いじめ」対策

(事務所誌ほなみ第121号より搭載)

 毎年課題とされながら一向に解決しないもの、その代表が学校の「いじめ」であろう。昨年も、わが県を含め、心の痛む報道が相次いでなされた。
「いじめをなくす」という言われ方をすることがある。しかし、大人の社会でも、職場、地域社会、さらには家庭内の DV・モラハラを含めれば、いじめはありとあらゆる場所で存在する。大人社会の縮図である子どもの世界において、「いじめをなくす」などというのは容易なことではない。
内田良准教授の分析によれば、文科省のデータをもとにいじめの認知件数(児童一〇〇〇人当たり)を比較すると、最大値の京都府(一七〇・三件)と最小値の佐賀県(〇・八七件)では一九六倍の発生率の差があるとされている。しかし現実にこれだけの差があるとは到底考えられない。存在しないいじめをあるものとして報告するとは考えられないから、他の都道府県でも、京都並みのいじめ件数があると考えた方がよさそうである。そして、ある意味では、京都の方がいじめを発見してもらえるので子どもにとっては安全であるとさえいえそうである。
数十年前から「いじめの早期発見」はテーマであった。そして、いじめの裁判例の中でも、早期発見義務に言及するものが現れ、文科省も「いじめの早期発見」を通知するに至った。しかし、残念ながら、「いじめを発見したがらない風潮」は変わりがない。その理由はどこにあるのか。
いじめを発見すれば、担任教師は膨大な業務を抱えるであろう。状況によっては、自己のクラス運営を批判されるおそれがある。いじめ防止対策推進法は、いじめ対策について重装備の規定をしているため、いじめを認知してしまった教師及び学校はますます大変な業務を抱える。また、「いじめ」に関するゼロ・トレランスともいえる政策により、いじめの認定は、加害生徒に対する「出席停止」や警察との連携など、加害生徒に対する人権侵害を伴うおそれもある。教師が「いじめかな」と思っても、それが「いじめでない」ことを祈り、時が解決することを祈りたくなる気持ちはわからなくもない。
私は、いじめはどこの学校・クラスにも普通に存在するものという意識を共通理解にすることが重要ではないかと考える。教師はわがクラスにいじめがあることを恥じる必要はない。あたりまえのことである。そして、いじめられた生徒はただ運が悪かっただけである。ましてやいじめられた自分を恥じたり責める必要は全くない。
そして、いじめがそのように普遍的なものである以上、いじめが発見されたら、いきなり鎧を着て武器を構えるようなイメージではなく、もっと普段着の対策にポイントを置くべきであると思う。大人である教師と子どもである生徒・児童との日頃のコミュニケーションの中にこそ、いじめ対策があるのではないだろうか。いじめは重大な人権侵害であるが、最初から深刻ないじめがなされることはまれで、多くはふざけやいじりから始まる。いじめ対策は、もっと段階的で柔軟なものであるべきだと考える。
教師と子どもたちのコミュニケーションが豊かなものとなり、子どもたちの笑顔が増える年になることを祈りたいと思う。

 弁護士 近藤 明彦

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