新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2018年7月26日

難治性のうつ病で軽易な労務しかできないAさんの控訴を棄却

労災保険法施行規則14条の別表第1では、労災事故で精神障害の後遺障害が生じた場合、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外に服することができない」場合には7級の3に該当する後遺障害と定め、給付基礎日額131日分の障害補償年金を支給することになっています。

この7級の3では、その精神障害が高次脳機能障害のような器質性精神障害とうつ病などの非器質性精神障害とを区別しておらず、「精神に障害を残し」、「軽易な労務以外に服することができない」場合には7級の3とすると定めています。

後遺障害の等級認定基準では、高次脳機能障害は「脳の器質的病変に基づくものであることから、MRIやCT等によりその存在が認められることが必要となる」とし、「神経心理学的な各種テストの結果のみをもって高次脳機能障害が認められないと判断すること」がないようにしています。高次脳機能障害は「認知、行為(の計画と正しい手順での遂行)、記憶、思考、判断、言語、注意の持続などが障害された状態であるとされており、」、全般的な障害として意識障害や認知症も含まれるとされています。

パワハラなどによる心的外傷に起因してうつ病や双極性障害を発症した場合に、難治性となって病状が遷延化することが知られています。うつ症状や職場のストレスによって前頭葉の血流低下が生ずることも最近の研究で判明していることです。遷延化して長年うつ病が継続している難治性となっている人の中には、少数ですが、脳の器質的影響がでる場合があることの研究結果も出されています。

高齢者のアルツハイマー型認知症などの診断で使われている脳の検査機器(SPECTやfMRIなど)の検査機器の発展は、うつ病などの非器質性精神障害の病態を解明する研究に寄与しています。

ところで、Aさんは上司によるパワハラによって心的外傷を受け、うつ病を発症して10年近く通院治療を受けており、うつ病となったことは業務に起因するものとして労災と認められています。

Aさんは遷延化しているうつ症状で、半日程度の仕事しかできず、主治医から軽易な労務しかできないと診断され、障害補償給付の障害等級の申請をしましたが、労基署は9級としか認定しませんでした。

Aさんは、最近の高次脳機能検査で、「検査上、軽度認知症レベル」との診断を受け、脳の血流状況がわかるSPECT(単光子断層撮影)では両側前頭葉内側の血流が低下していることが認められ、主治医から「うつ病遷延化による器質的影響として前頭葉萎縮、前頭葉血流低下をきたし、高次脳機能障害を強く合併した」と診断されました。

Aさんのように、高次脳機能検査で軽度認知症と診断され、脳の血流状況を検査する検査でも機能低下を認める客観的検査所見がありながら、「非器質性精神障害」というだけで、労災保険法施行規則14条別表1が定める7級の3の「軽易な労務以外の労務に服することができない」に該当する場合でも、7級相当の後遺障害と認めないことは施行規則に違反するものといえます。

うつ病など非器質性精神障害の障害等級について、認定基準が等級の上限を9級相当としていることは違法であるとして、後遺障害の等級認定の取消訴訟を闘っているAさんに対し、東京高裁第5民事部は非器質性精神障害と器質性精神障害に差異を設けている認定基準は施行規則14条の規定に反するものではないとして、Aさんの控訴を棄却しました。

Aさんは上告して、認定基準の違法性を闘っています。うつ病だから、適応障害だから、非器質精神障害だからということで、障害等級は9級止まりとあきらめることなく、障害等級の認定基準の是正のために闘っているAさんにご支援をお願いします。

 

弁護士 土屋 俊幸

著者:

土屋 俊幸パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。

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