新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2017年6月30日

52年目を迎えた新潟水俣病

この6月で公式確認から52年が経過した新潟水俣病ですが、2013年に始まったノーモア・ミナマタ第2次新潟訴訟は、1月から5月にかけて「墨塗り文書問題」で大きな動きがありました。

問題の文書は、2015年2月に国が証拠として提出したチッソ水俣工場と同種の6社6工場の排水分析をまとめたもの。東京工業試験所が行った析結果では、1960年12月から61年にかけて6工場の排水溝から4回にわたって採取した排水中には、チッソ水俣工場の排水と同程度かそれよりも高値の総水銀が検出されています。しかし、証拠として出された文書は、工場名は墨塗りにされており、6工場には昭和電工鹿瀬工場は含まれていないという経産省担当者が作った報告書が添付されています。

これまで国は、原告の求釈明に対し、6工場の名前を明らかにすることを拒否。そこで原告は、2016年3月、6工場の実名が記載された文書の提出を求めて文書提出命令の申立てをしました。

新潟地裁は、本年1月13日、6工場の工場名が墨塗りされていない文書提出を国に命じましたが、国からの即時抗告の申立てを受けた東京高裁は、3月30日、新潟地裁決定を取り消し、さらに、5月16日、原告らの許可抗告の申立ても却下しました。

 

東京高裁決定は、6工場の実名が公表されれば、今後、調査結果を公表しないという国の約束は信用できないとして国の調査に協力しないという事態が起こるから、国が行う任意の情報収集活動の迅速かつ円滑な遂行に著しい支障が生ずるとしています。

しかし、国が6工場に調査結果を公表しないと約束した事実はありません。「公務の遂行」に支障が生ずるといいますが、具体的にどのような支障が出るのか、高裁決定では全く触れていません。水銀は、今では水質汚濁防止法等の規制対象になっており、新潟地裁も、「国の調査に一切協力しないといった事態が生ずるとは容易に想定されない」と述べています。高裁決定は国の言い分を鵜呑みにしたもので、不当な決定と言わざるを得ません。

 

高裁決定は、国の責任追及との関係でどのような影響があるでしょうか。決定は、6工場の実名入りの文書の取り調べの必要性を否定しており、その理由として、本件文書に関する争点は、国の水質二法に基づく規制権限の不行使が違法か否かであるが、アセトアルデヒドの生産実績が全国のトップクラスである昭和電工鹿瀬工場は、本件調査の対象に入っていないから、鹿瀬工場を調査対象としなかったことの適否を主張すれば足り、6社6工場を具体的に明らかにする必要はない、と述べています。これは、6工場の排水分析結果の内容と、6工場の調査対象から鹿瀬工場を除外した通産省の対応が、国の責任を判断するうえで極めて重要であることを高裁が正面から認めたものといえるでしょう。

 

裁判では、今回の高裁決定をふまえて、国が、6社6工場の排水分析調査結果をどのように検討・評価し、水俣病被害の拡大を防ぐために何をすべきであったかが厳しく問われることになるでしょう。何故なら、国が昭和35年に立ち上げた水俣病総合調査研究連絡協議会で、6社6工場の排水分析結果を詳細に検討し、鹿瀬工場をはじめとするアセトアルデヒド工場の排水規制に取り組むべきであったのに、国は、分析結果を握りつぶしたまま、協議会自体を自然消滅させ、その結果、阿賀野川流域に第2の水俣病を発生させたからです。裁判での国の責任追及は、大きな山場を迎えようとしています。

(弁護士 中村周而)

著者:

中村 周而さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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