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2018年10月22日

NHK出版新書「子どもの脳を傷つける親たち」(友田明美著)

子どもに対する暴行・傷害で死亡させる事件や食事を与えず餓死させるなどひどい児童虐待の事件の報道が見受けられます。2000年に制定された児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)は、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト(育児放棄)、④心理的虐待の4つ類型を規定しています。

新聞では、身体的虐待や食事を与えないようなネグレクトの事案が報道され、児童虐待というと、身体的虐待とネグレクト(育児放棄)が多いような印象を持ちますが、児童虐待の相談で一番多いのが、④の心理的虐待です。

この心理的虐待には、子どもに対して暴言を浴びせたり、言葉による直接的な脅しをするだけでなく、夫婦間での暴力(DV)を見せることなども心理的虐待に該当します。しかも、DVでは身体的な暴力に限らず、言葉の暴力(激しい口論や脅しの言葉など)も含まれます。たとえば、母親が父親に殴られたり、言葉の暴力で怖い思いをして心理的に抑圧されている様子を子どもが見ることで、父親のDVによって恐怖や不安を感じ、子どもの心が傷つけられ、子どもの心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えると言われています。

児童相談所での児童虐待で相談件数が多いのは心理的虐待で、平成28年度では50%を超えています。子どもと接する時間が長い母親による虐待が多数を占めています。

ところで、職場でのいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントによるストレスで、適応障害やうつ病を発症するという労災相談が増えています。従来、「心」の病気といわれていた精神症が脳細胞の損傷や脳の機能障害であることが、職場のストレスと脳機能の関係が研究されるようなって判明してきました。近年、検査機器の発展により脳の動的な働きを検査することができるになり、大人でもパワハラなどによるひどい言動で脳が傷つけられることがわかってきました。職場のストレスによってうつ病を発症すると、大脳の前頭葉や海馬の血流が低下することが報告されています。

大人でも、上司から毎日怒鳴られ、人格を批判される言動などによって、心が傷つき(心的外傷)、不安障害やうつ状態となり、それが脳細胞を損傷したり、前頭葉などの血流を低下させるなど、精神作用を司る前頭葉や海馬、扁桃体の脳を傷つけます。それで子どもがストレスで脳にどのような影響を与えるのかを紹介した文献がないか調べてみました。

子どもに対する言動や身体的な加害が赤ちゃんや幼児、児童生徒など、脳の発達段階にある子どもになされた場合、脳を傷つけ、脳発達に大きな影響を与えることが最近の研究でわかってきました。児童虐待によって、子ども達の脳の発達にどのような影響があるのかを研究し、それをやさしく解説した「子どもの脳を傷つける親たち」(友田明美著 NHK出版新書)という本がありました。

この本によると、マルトリートメント(虐待など不適切な扱い・養育)を経験する年齢によって影響を受ける脳の場所が異なることがわかっています。

①記憶と感情をつかさどる「海馬」の感受性期(3~5歳)

②右脳と左脳をつないでいる「脳梁」の感受性期(9~10歳)

③思考や行動にかかわる「前頭前野」の感受性期(14~16歳)

といわれています(86頁)。脳には急成長を遂げる「感受性期」があって、この期間に過度のマルトリートメントを受けると、通常の発達段階では見られないような適応をし始め、結果としてその部位や領域が変形したり、働き(機能)が変わってしまうことが書かれています。

たとえば、ハーバード大学の女子学生を対象に調査で、幼いことに両親の夫婦げんかを見て育った人たちのグループはそうでないグループと比べ、IQ(知能指数)と記憶力の平均点が低いという結果を得ていることをこの本で紹介しています(93頁)。両親間の身体的な暴力を目撃したときよりも、言葉の暴力に接したとのほうが、脳へのダメージが大きいことが紹介されています(94頁)。離婚事件で夫が妻に対する暴力を振るっても、子どもに暴力は振るっていないということで、夫が子どもの親権を主張されることがありますが、子どもに暴力を振るっていないというだけで、暴力を振るう父親を親権者とすることは望ましくないことを示しているといえます。

また、過度の体罰を受けた人は大脳皮質の感覚野に「痛みを伝える神経回路」が細くなっているということの研究報告があり、体罰によってもたらされる痛みに鈍感になるようにと、脳が適応している可能性があると考えられるとしています(79頁)。

「第3章 子どもの脳がもつ回復力を信じて」で(110頁以下)では、傷ついた子どもの脳も最近の脳科学研究では、「脳の傷は癒される」という事例が多く報告されていることや、これまで脳の細胞は一度損なわれてしまうと再生がきかないといわれてきましたが、近年、成人の脳においても再生、回復の可能性が指摘されていることが紹介されています。日々成長しつづける子どもの脳も適切な治療やケアを行えば、回復の可能性が高く、感受性期にある脳は傷つきやすいぶん、柔軟性も高いことが述べられています。

子どもを虐待から救い、適切な治療を含めた早期の対応によって回復することができることが述べられております(112頁)。

この本は、子どもを育てているお母さんやお父さんがぜひ読んでいただきたい一冊です。

弁護士 土屋俊幸

著者:

土屋 俊幸パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。

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