新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2018年1月16日

なくそう学校での心停止の死亡事故

ボールが胸に強く当った、水泳授業でプールの冷たい水に急に飛び込んだ、部活の運動中やマラソンなど、中学生や高校生が心停止で倒れる事故が見受けられます。突然倒れて心停止した場合には、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(VT)で倒れる場合が多く、救急車が来るまでに、迅速な胸骨圧迫と人工呼吸による心肺蘇生とAEDによる電気的除細動を行えば大抵の場合は助かると言われています。老人の場合にはお風呂あがりに心停止で倒れたりします。

新聞報道によると、新潟県内でも、高校野球部の女子マネージャーが昨年7月21日に、練習があった野球場から学校まで約3・5キロを走った後に学校の玄関前で倒れ、野球部の監督が「呼吸はある」と判断し、AED(自動体外式除細動器)を使わずに救急車の到着を待ったことで、低酸素脳症となった女子マネージャーが8月5日に亡くなってしまうと痛ましい事件が起きています。

 

「救急蘇生法の指針2015」をご存じですか

心停止で突然倒れた人を救命するための講習会を消防署員が中心となって行っています。講習会では、救急車が来るまでの間にAEDを使った救命処置を行うために、「救急蘇生法の指針2015(市民用)」に基づいた講習を行っています。

心停止をした傷病者を見つけた場合に、AEDを使った救急蘇生法を行う場合の手順が定められています。①反応を確認する(肩をやさしくたたき大声で呼びかける)、②119番通報をしてAEDの手配をする、③呼吸を観察する(普段どおりの呼吸があるかどうかを観察)、④胸骨圧迫を行う(人工呼吸の技術を身につけている場合に人工呼吸を行う)。⑤AEDを使用する(AEDの電極パッドをつけて、心電図解析を行わせるなど音声にしたがって操作する)、⑥AED後に再度胸骨圧迫を行うという手順で行います。

「呼吸」の観察で注意すべきことは、心停止で倒れた人が、「あえぎ呼吸(死戦期呼吸)」と呼ばれるしゃくりあげるような途切れ途切れの不規則な呼吸を行うことがあります。このような呼吸をしていても、普段どおりの呼吸をしていなければ、胸骨圧迫を行い、AEDが到着したら直ちに装着して、AEDの自動診断機能にまかせ、音声の指示にしたがって操作をすると、指針ではなっています。

「普段どおり」ではない呼吸には、不規則な呼吸、極端な徐呼吸(まばらな呼吸)、いびき様呼吸、唸るような呼吸などがあります。呼吸が普段どおりかどうかは、胸骨圧迫(心肺蘇生)を行う際に確認すべきことで、AEDが到着したらすぐに、AEDを装着することが必要です。電極パッドの貼り方が悪い場合にはAEDの音声でやりなおすように指示されます。

 

AEDの心電図解析機能

AEDは電気的除細動を行うための器具と考えられていますが、AEDの機能にはもう一つ重要な心電図解析機能があります。電源を入れて電極パッドを貼ると、心電図の解析を行う機能です。この診断機能によって、AEDによる除細動を行う必要があるかどうかを指示してくれます。

呼吸が正常に戻って心拍が再開している場合や心室細動による心停止でなかった場合など、AEDの心電図解析によって除細動の必要がないと診断されると通電不要の指示が出され、通電ができないようになっています。除細動が不要の人に誤って除細動を行うことがないようにするための防止機能がついています。

呼吸が戻ったかどうかというような判断をするのではなく、救急車が来るまでにAEDを迅速に運んで、AEDを装着して、AEDの指示にしたがって操作を行うことが正しい救命方法といえます。

心臓が原因で心停止となって倒れた人に対して、心肺蘇生を行わないで放置すると、除細動が1分遅れるごとに7~10%の救命率の低下があると言われています。救急車の平均到着時間は6分を超えるといわれています。心室細動で倒れた場合の唯一の救命方法は電気的除細動で正しい拍動に戻すことでしかありません。救急車で到着した救急隊員が心停止者に行う救命方法もAEDによる電気的除細動です。

政府が普及を進めている「救急蘇生法の指針」は最新の医学的知見に基づいた国際的に標準の救急処置の手順です。「救急蘇生法の指針2015」を作成した「日本救急医療財団心肺蘇生法委員会」の構成機関は、日本医師会、日本救急医学会、日本赤十字社などの医師だけでなく、救急活動に携わっている厚生労働省や消防庁、警察庁交通課などで構成されています。これらの機関で構成されている財団が救急蘇生法の手順を「指針」(ガイドライン)として定めたものです。

文部科学省も「救急蘇生法の指針」の手順によるAEDを使った救急蘇生法を、中学以上の学校教育で生徒に実習させています。学校安全計画にAEDの研修を盛り込み、教師や職員への研修を行うことを文部科学省は推進しています。

学校内では、AEDを使った救命処置を迅速に行うことができるので、救急蘇生の指針(ガイドライン)を教師や関係者がきちんと習得すれば、突然の心停止による死亡事故を防ぐことができるといわれています。

 

弁護士 土屋 俊幸

著者:

パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。

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