新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2011年1月21日

ノーモア・ミナマタ新潟訴訟-基本合意後の動き

 ~松本環境大臣が謝罪~
 昨年10月21日に成立した基本合意をふまえて、現在、和解に向けた取り組みが進行中である。12月16日の第8回弁論(第4回和解協議)では、国(環境省)から裁判所に基本合意に基づく取組状況が報告された。
 ひとつは、就任間もない松本龍環境大臣が謝罪のため、11月23日に新潟を訪れたこと。歴代環境大臣のなかで新潟水俣病を引き起こした国の責任を陳謝するため来県されたのは松本大臣が最初である。大臣は、ノーモア・ミナマタ新潟訴訟の原告をはじめとする新潟水俣病被害者や関係者の前で、「新潟で第2の水俣病が引き起こされたことは痛恨の極みだ。被害拡大を防止できなかったことについて改めて深くお詫びを申し上げたい」と述べ、謝罪した。
 被害者からは様々な要望が出された。「水俣病の根本的な治療方法、治療薬の開発」についての要望に対し、大臣は、「製薬メーカーからヒアリングをしてみたい」と述べた。「水俣病特措法の申請受付期間を制限しないでほしい」という意見に対しては、「しっかりドアは開けておきたい」と答え、「患者の掘り起こしについては、しっかりと取り組んでいきたい」と前向きの回答をした。

 ~第三者診断が始まる~
 もうひとつは、11月22日に、個々の原告が新潟水俣病の被害者であるかどうかを判定するための第三者委員会が設置され、座長には本間新潟大学名誉教授が座長となったこと。この第三者委員会には判定資料として原告を診断した主治医が作成する共通診断書と、新潟県が指定する医療機関の医師が作成する第三者診断結果が用いられるが、12月6日からそのための第三者診断が新潟大学医歯学総合病院で始まり、年内で殆どの原告が診断を終えている。
 裁判所は、これらの経過報告を受けて、次回期日を3月3日に指定した。第三者診断や第三者委員会の判定が順調に進めば、この日に和解成立が可能になる。

 ~シンポジウムで健康調査の必要性を問う~
 1月15日、「ノーモア・ミナマタ全国支援連絡会」等が主催して、「水俣病の健康調査の必要性を問うシンポジウム・すべての被害者を救済せよ」が東京都内で開かれた。シンポでは、新潟の関川智子医師をはじめ日頃から水俣病被害者の診療に携わって医師や学者が講師として参加し、全被害者救済のためには住民健康調査が不可欠であることを明らかにした。
 新潟県では、昨年5月から始まった水俣病被害者特措法の申請受付が、昨年12月末時点で621名となり、毎月30名余りの被害者が申請をしており、この状態は今後も続くと思われる。しかし、まだ自分が水俣病被害者であると気づかないでいる人や、社会的差別や偏見によって自分が被害者であると名乗り出ることができない多くの人々がいることも指摘されている。
 特措法の申請期間について、松本大臣は、「しっかりドアは開けておきたい」と約束したが、平成22年4月16日の閣議決定では、「平成23年末までの申請の状況を、被害者関係団体とも意見交換の上で十分に把握し、申請受付の時期を見極める」となっており、平成23年末までの親戚状況の如何によっては、申請受付が締め切られる可能性も十分にある。
 それだけに、全被害者救済のためには、特措法の申請期間に制限を設けないことと、被害地域での住民健康調査が不可欠だが、基本合意では、そこまでの合意には至っていない。「メチル水銀と健康影響との関係を明らかにすることを目的とした効果的な疫学調査を行うための手法について、原告らを含む地域の関係者の協力や参加の下、その開発を行うよう努める」という表現に止まっている。
 全被害者の救済をより確実なものにするため、基本合意の精神をさらに進化させ、和解内容に反映させたいものである。

 弁護士 中 村 周 而 

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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