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2017年9月19日

単なる改憲反対で何が悪い!~憲法はどこまで改正できるのか?~

 

(ほなみ第122号より搭載) 

 現首相は、日本国憲法改正のため、自衛隊の明記などを内容とする改憲原案を国会に提出する意向を示しています。また、各野党に対し「単なる反対ではない対案の提出」も求めています。

 日本国憲法を改正するには、国会による発議と国民投票による国民の承認が必要です。ところで、これらの手続を踏めば、憲法の内容をどのようにでも改正できるのでしょうか。例えば、軍隊(自衛軍)の明記を認める憲法に改正することは可能でしょうか。

 まず、いかなる内容に憲法を変えることもできるという考え方があります。「憲法を変える権利と憲法を作る権利は同じで、既に作られた憲法の考え方に縛られない。」、「法は社会の変化に応じて変化すべきで、憲法もその例外ではない。」などが理由です。

 しかし、現在では、もとの憲法の基本原理を変更することは許されないという考え方が有力です。日本国憲法についてみると、憲法を作る権利のありかを示す国民主権、国民主権と深く関係する基本的人権の尊重と平和主義、憲法改正の規定に反する内容の改正はできないと考えられています。

 それでは、軍隊(自衛隊)の存在の明記はどうでしょうか。軍隊の存在を明記しても平和主義とは矛盾しないという指摘もありますが、どうでしょうか。いったん軍隊(自衛隊)の存在が明記されてしまうと、その活動範囲が拡大し、戦闘行為によって、隊員や一般国民の基本的人権が侵害される可能性も高くなると考えます(「軍隊の活動範囲が拡大し、人手が足りない。そうだ、徴兵制だ。」、「学生の力を借りよう。」「それでも男手が足りない。女性にも活躍してもらおう。」という話になりかねません。)。

 「改正によって基本原理との整合性を従前どおり保つことができるのか。」という検証なくして憲法改正はできないですし、改正すべきではありません。改正により、国民の基本的人権を侵害する理論的及び現実的可能性が高まるのであれば、憲法を変えるべきではありません。この検証を踏まえない改憲案には、「対案」云々ではなく、単なる改憲反対という姿勢で対峙することも必要ではないでしょうか。

 むしろ、今の政府には、「時代・実情に合わなくなった」という理由で日本国憲法を改正するのではなく、「日本国憲法に合わなくなった実情」の是正を求めたいと思います。単なる改憲反対は、実情の是正もせずに改憲を進めようとする政府に対する歯止めとして、最も端的かつ有効な意見表明であると考えます。

 

弁護士 加賀谷達郎

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