新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2011年4月14日

投資家は非合理?

1,4月1日,2日と先物取引全国研究会に参加してきました。研究会では,先物取引の被害救済のセミナー,大学教授による講義,各地の弁護士の活動報告等がなされました。1日目には,今回の震災で被災された仙台の弁護士によるセミナーが行われましたが,「このような事態にあっても,なお消費者被害,先物取引被害の歩みをとめてはいけない。」との言葉が強く印象に残りました。
2,今回の講義で紹介された理論を紹介します。みなさんそれぞれ考えてみて下さい。
①600万円の現金を持っています。
60%で1000万円が手に入り,40%で0円のくじがあります。
くじの期待値は600万円ですが,あなたはこのくじに参加しますか?参加費が500万円だったらどうですか?
②600万円の負債を負っています。
60%で負債が1000万円になりますが,40%で負債が0になります。
くじの期待値はマイナス600万円ですが,あなたはこのくじに参加しますか?
①の場合,つまり利益がある場合は,多くの人は「確実性」を選択し,リスクを回避しようとする傾向にあり、500万円で行えるとしてもほぼ同様のようです。
他方,②の場合,つまり損益がある場合は,多くの人は「不確実性」を選択し,リスクを負うほうに心理が働くそうです。
これは行動経済学の理論として実証されている「プロスペクト理論」というそうです。
3,先物取引においては,利益が出ることもあれば損失が出る場合もあります。利益が出ている場合は,上の①の場合ですので,少しでも利益が出れば確実に利益を獲得しようとします。他方,損失がある場合,上の②の場合ですので,不確実な投資を促進するような投資家心理がはたらきます。
このため,投資の結果としては「利益が少なく,損が膨らむ」ことになります。また,損失がある場合,多くの業者は「一気に損失を取り戻しませんか」など勧誘してくるため,結果として損失が拡大することがあります。
4,裁判所は投資被害の事案において「損失が出ているのにやめないのは自己責任」として,投資家にも落ち度があるとの判断を示すことがあります。この判断の前提には,「合理的な投資家であれば,損失が拡大する前にやめることができたはず」という考え方があるように思われます。しかし,プロスペクト理論からすれば,むしろ損失がでているときは拡大させてしまう方向に心理が働くのが自然かつ一般的であり,そもそも「投資家は非合理的」であるという視点からの検討も必要であると思います。
「先物取引で損失が出たけど投資だし仕方ない…」と思い悩んでいる方も,場合によっては業者に対して損害賠償請求ができる場合があります。一度当事務所の弁護士にご相談ください。
(先物取引被害についてはこちらもご覧下さい。https://niigatagoudou-lo.jp/?p=494

弁護士 二 宮 淳 悟

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著者:

2010年12月 当事務所入所 ・2012年~新潟県弁護士会 東日本大震災復興支援対策本部 本部長代行 ・2015年~新潟県弁護士会 憲法改正問題特別委員会 副委員長 ・2019年~新潟県弁護士会 糸井川大規模火災対応本部 事務局長 ・2020年~新潟県弁護士会 学校へ行こう委員会 副委員長 ・2023年~新潟県弁護士会 刑事弁護委員会 副委員長  ・2012年~日本弁護士連合会 災害復興支援委員会 運営委員 ・2018年~関東弁護士会連合会 災害対策委員会 副委員長

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