新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2017年12月29日

特殊詐欺事の「受け子」に未必的故意は認められるか

オレオレ詐欺など特殊詐欺の被害が多発しています。特殊詐欺では、巧妙な事件ほど主犯格のメンバーは表に出ません。逮捕されるのは、事情を知らされないで現金を受け取りに行ったり(受け子)、その受け子を紹介した人です。そのため刑事裁判では、受け子やその紹介者に詐欺の「未必の故意」があったかどうかが争われます。

被告人が氏名不詳者を含む複数の者と共謀して高齢者を電話で騙し、指定するアパートの一室に現金を送らせようとした現金送付型の特殊詐欺事案で、被告人は無罪判決を受けました(福岡地裁久留米支部平成28年3月8日判決)。被告人は、面識のない者の自宅に、夜間、夕食も取らずに一人で待機し、他人宛の荷物を受領する役割でしたが、「何らかの違法な行為に関わるという認識」はあったとしても、「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」までは認められないから、未必的故意は認められないと判断されました。

ところが控訴審では、本件のように特異な状況で荷物を受領する場合は、「何らかの違法な行為に関わるという認識」さえあれば、特段の事情がない限り、本件のような特殊詐欺につき規範に直面するのに必要十分な事実の認識があったものと解され、その行為が「詐欺に関与するかもしれないとの認識」があったと評価するのが社会通念に適い相当」であり、「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」を排除するような特段の事情は見当たらないから、被告人には少なくとも詐欺の未必的故意があったとして有罪判決を言い渡しました(福岡高裁平成28年12月20日判決)。

一審判決では、特異な状況での受領行為という認識があるだけでは未必的故意を認定するには不十分で、「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」を基礎づける事実の立証が必要であると判断したのに対し、控訴審判決では、特異な状況での受領行為であること自体が「詐欺に関与するものかもしれないとの認識」を基礎づける重要な事実であるとしたのです。

もっとも、1ヶ月間に約20回、異なるマンションの空室で、異なる名前を使い他人になりすまして荷物を受け取っていた事例では、犯行当時、報道等により「空室利用送付型詐欺」が社会に周知され浸透し社会常識となっていたとはいえず、また、違法薬物かけん銃等の法禁物であると思っていたとの弁解を排斥する根拠もないとして、特殊詐欺、同未遂につき有罪とした原判決を破棄しています(福岡高裁宮崎支部判決平成28年11月10日判決)。

いずれにせよ、知らない人から「荷物の受け渡し」の仕事を依頼されたら、「詐欺に関与するものかもしれない」と疑ってみることが必要な時代になっていることは確かです。

                          弁護士 中村周而

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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