新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2011年9月1日

親の宗教活動と子どもの人権

(事務所誌「ほなみ」第108号掲載)子どもが、カルト団体の施設のなかで十分な食事も与えられずに放置されていたり、暴行を受けているという事件は、これまでもたびたび発生しています。あのホームオブハート事件でも児童虐待が大きな問題になりました。カルト団体のなかで共同生活を強制されていた子どもは、劣悪な生活環境によって心身の成長に悪影響を受ける場合が少なくありません。子どもは社会経験が乏しく、感化されやすいため、長い間、外部から遮断された生活を送っていると、その団体でしか生活できないように人格形成されてしまう危険があります。

 カルト団体の施設内の子どもの処遇の実態は、死者が出るとか深刻な被害が発覚して、公的機関が動き出した場合に初めて報道され、世間に知られるケースが少なくありません。子どもの人権救済の観点からすれば、このような団体については、実態の把握を含めて公的機関が迅速に対応することが求められます。

 子どもを守るのはまず親です。子どもは成人よりも精神的・肉体的・経済的に弱い立場にありますから、親には子どもを健全に養育することが求められます。しかし、カルト団体や一部の宗教団体で活動している親は、そこで暮らしたり活動することが子どもの幸福につながると信じ込んでいるため、環境を変えようとはしません。そのため、親の宗教活動が原因で、子どもの人権が侵害されるという深刻な事態がよく発生します。親の信仰によって子どもが医療行為を受けられなくなったり、親が幼い子どもを連れて宗教活動に奔走するため、子どもが健康を損ねるという事態が起こることもあります。

 憲法20条1項は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と規定しています。信教の自由には、布教活動や宗教活動の自由も含まれるため、宗教活動に奔走する親の信教の自由と、子の人権や福祉とが、時にはするどく対立することになるのです。

 以前、私が担当した事件で、依頼者の奧さんが、3歳になる長女の健康を顧みずに顕正会という仏教系の宗教団体の活動に熱中したため、夫から離婚を求められ、子どもの親権者を誰にするかが裁判で争われたことがありました。新潟家庭裁判所は、3歳の幼児にとって、母親の監護と愛情が大きな役割を果たすことは否めないとしながらも、「客観的にみれば、被告(妻)は、顕正会の活動が第一であり、長女の健康な生活を一番に考え行動するという点において大きく欠ける点があることは否めない。とくに長女が未だ乳児のころから周囲の制止もきかずに顕正会の活動に連れ回すなどし、幼時となった現状においても、長女の生活のリズムに一切配慮せず、また、その体調等に配慮を払っていない点は大きな問題である。被告は、自らが信仰する顕正会の活動を行うことが長女の幸せに繋がるという考えに捕らわれており、これを直ちに改善することは考えがたい」とし、「長女の福祉を総合的に考慮」して、父親である原告を親権者に指定しました。子どもの人権や福祉に十分配慮した判断といえるでしょう。

弁護士 中村周而

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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