新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2013年6月20日

先物取引の被害に遭われた方へ(その1) 手数料稼ぎの取引

 業者から儲け話を聞かされ、金、ゴム、トウモロコシ、大豆などの先物取引をやったが、多額の損失を被ってしまったという方をよくみかけます。

 そのような場合、勧誘されたとはいえ、最終的には自分の判断で取引をしてしまったのだから、あきらめるしかないと考えてしまう方が多いようです。または、担当者から、絶対に儲かるとか、脅迫じみた言葉を言われたけれども、録音していたわけではないので、証拠がなく、無理だろうと考えてしまう方も多いようです。

しかし、先物取引の勧誘行為の違法性の判断は、担当者がいつ何を言ったかということが証明できなくても、委託者別取引勘定元帳(通称「イタカン」)を取り寄せ、取引の経過を分析することで証明できることが多いのです。

取引の中に、次のような取引が多い人は、業者の行った勧誘が違法である可能性が高く、弁護士を通じて交渉や訴訟を行えば、損失額を取り戻せる可能性があります。

① 直し

  例えば、「大豆の買玉を5月1日に仕切り、同じ日(5月1日)に再び大豆の買玉を建てること」逆に、「大豆の売玉を5月1日に仕切り、同じ日(5月1日)に再び大豆の売玉を建てること」簡単いえば、買い直し、売り直しをすること。

② 途転

  例えば、「大豆の買玉を5月1日に仕切り、同じ日(5月1日)に大豆の売玉を建てること」逆に、「大豆の売玉を5月1日に仕切り、同じ日(5月1日)に大豆の買玉を建てること」分かりやすくいえば、暖房を付けていたら、暑くなったので、暖房を消すのと同時に冷房を付けるような取引です。

③ 両建

  例えば、「大豆の買玉を建てたままの状態で、大豆の売玉を建てること」又は「大豆の売玉を建てたままの状態で、大豆の買玉を建てること」さっきの例でいえば、ストーブを付けたまま、冷房を付けるような取引ですね。

 これらの取引が正常な取引ではないことは、少し考えればすぐにわかると思います。

「直し」のどこがおかしいかというと、再び大豆の買玉をするということは、大豆がまだ値上がりすると予測していることになりますが、そうであれば、前にしていた買玉を仕切らずにそのまま持っていればよいことになります。このような取引をして儲かるのは、手数料が増える業者だけであり、委託者(顧客)には何の得もないのが普通です。

 「途転」と「両建」の問題点は、少しだけ難しい話になりますが、結論をいえば、素人がやるような取引ではなく、プロ向けの高等戦術です。

「途転」について言うと、もうこれ以上値段が上がらないだろうと考えられるところで、いったん買玉を仕切って、しばらく相場の様子を見て、値下がり傾向が確実に予測される時点で売玉を入れるのが普通の取引で、買玉を仕切って直ちに売玉を入れるなどという取引は、1日中、パソコンに向かって相場を研究するプロでなければできない取引なのです。「途転」はプロ向きの攻めの高等戦術です。

 「途転」が攻めの高等戦術なら、一方、「両建」は、守りの高等戦術です。たとえば、買玉を入れていたが値下がりし、追証拠金がかかりそうな時点で、同枚数の売玉を建てれば、さらに値が下がっても、(買玉は損が拡大するが、売玉では同額の利益が出るため)トータルの損は拡大せず、いったん守ることができます。しかし、両建をした場合には、値段が上がっても、(買玉は利益が出るが、売玉で損が発生するため)結局利益は挙がりません。両建をして最終的に儲かるためには、買玉と売玉をそれぞれ極めてうまいタイミングで仕切る必要がありますが、それは相場に精通したプロでなければまず無理です。

 このように、「途転」や「両建」はほとんどの場合、顧客に利益をもたらすことなく、取引枚数が増えることにより、業者の手数料が増えるだけの結果に終わります。冷暖房の例でお分かりのように、顧客にとっては、極めて効率の悪い取引です。

 このような取引が多数繰り返されているということは、業者が自社の利益のみを考え、顧客の利益を考えずに、主導して取引を行っていることを推認させるものであり、違法であると判断される可能性が高いです。

このような取引に心当たりのある被害者の方は、泣き寝入りしないで、弁護士に相談されることをお勧めします。損失を取り戻せる可能性があります。

 先物取引についてのその他の情報は、また次の機会にご説明したいと思います。

                 (弁護士 近藤明彦)

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。

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