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2014年1月20日

フィルター付きベントと全住民避難に要する時間

 原発再稼働をめぐって連日のように報道がされていますが、年末から最近にかけて、次の2つの報道が目にとまりました。

 ひとつは、昨年12月24日、東京電力が新たなフィルター付きベントを柏崎刈羽原発6,7号機に増設するため、新潟県と柏崎市、刈羽村に安全協定に基づく設置の事前了解願を提出したというもの。

 フィルター付きベントは、事故時に放射性物質を含む気体を格納容器から原子炉建屋外のタンクに逃がす設備。新規制基準で設置が義務づけられており、現在、6,7号機の原子炉建屋の外で工事が進められていますが、昨年12月に東電が事前了解願を出したのは、建屋脇の地下30メートルに部屋を設ける地下式のベント設置で、昨年9月に泉田県知事と広瀬社長が会談した際、広瀬社長が追加対策として提案していたもの。

 東電の説明によれば、フィルター付きベントで放射性セシウムを99.9%以上除去できるとしていますが、キセノンなどの希ガスは除去できず、フィルターを素通りして大気中に放出されます。元原子力安全委員会事務局技術参与の滝谷絋一氏は、原子炉内の希ガスが全て放出された場合、柏崎刈羽原発6号機では敷地境界での全身被ばく線量が約3万7000㍉シーベルトになると試算し、旧原子力安全委員会が定めた立地指針の目安線量である250㍉シーベルトをはるかに超える可能性があると指摘しています。

 もう一つは、民間団体の「環境経済研究所」の試算によれば、国内の全原発で30㌔圏内の全住民が避難するには少なくとも半日以上かかるという毎日新聞の1月14日付け報道。柏崎刈羽原発の場合は、半日どころか国道のみを使用した場合が66.5時間、国道と高速・主要地方道を使用しても29.5時間を要すると試算されています。

 さらにこの新聞報道は、「福島第1原発事故を受けた国会事故調査委員会報告書によると、重大事故発生から格納容器の損傷、放射性物質の放出までに要する時間は推定3時間から8時間半。今回の試算は、各原発でこの時間内に30㌔圏内から全員避難させることが難しい現実を突きつけた。原子力防災は原発の規制基準とともに『安全の両輪』とされ、今後の各自治体の防災計画づくりが再稼働を左右する可能性がある」と指摘しています。

 フィルター付きベントについては、東電が原子力規制委員会に規制基準適合申請をする際の申請書に、この「装置は、立地自治体の了解の後に運用を開始するものであり、既に設置してある耐圧強化ベント系と併せて、立地自治体と協議のうえで定める事業者防災事業計画に基づき、避難状況の確認等を行うことを手順等に明記する」と記載しています。

 今後、県と東電が、安全協定に基づき、避難状況の確認等についてどのような協議をするのか、その場合、たとえば30㌔圏内の全住民が避難するには、どのような条件下でどの位の時間を要することになるのか、大いに注目する必要があります。

(弁護士 中村周而)

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さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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