新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2014年8月31日

水俣病特措法の非該当判定に対する異議申立の審理で被害者が意見陳述

 水俣病特措法に基づき一時金対象者に該当しないとする新潟県知事の処分を不服として、阿賀野患者会の会員43人が新潟県に行っている異議申立ての審理で、8月8日、異議申立人(水俣病被害者)と代理人弁護士による口頭意見陳述が県庁内で行われました。

 特措法には異議申立ての規定はありませんが、判定検討会の検討を経て出される県知事の該当または非該当処分は、救済申請者が210万円の一時金や療養手当等の支給を受ける権利に直接影響を及ぼす法的効果を有することから、行政処分に該当するというのが行政法学者の通説的見解です。

 ところが環境省は、非該当の判定は行政処分ではないから異議申立てはできないという見解に固執し、熊本県や鹿児島県も環境省の見解に従って異議申立てを全て却下しました。

 これに対し、新潟県の泉田知事は、平成25年3月、阿賀野患者会の会員からの異議申立てを受理し、「県の判定結果により、特措法5条に定める金銭の給付を受けるか否かという申請者の法的地位に変動をもたらす以上、県の判定には処分性が認められる」というコメントを発表しました。現在、新潟県は、阿賀野患者会の会員も含めて92人について異議申立ての審理を進めています。

 今回の意見陳述が開かれるまでの間、申立人代理人や関係者は、県の担当者と審理の進め方について10回余りにわたって協議を行いました。また、申立人は、阿賀野川の魚介類を家族ぐるみで多食した状況や、四肢末梢の感覚障害の発症経緯などを詳細にまとめた陳述書を作成。主治医の関川智子医師が作成した診断書と一緒に書証として県に提出しました。

 この日、陳述を行った3人の申立人の一人は、40年余りにわたって両手両足のしびれや手の震え、耳鳴りに苦しんできたことや、主治医の関川医師の時間をかけた丁寧な診察の仕方に比べて大学病院での検査は、時間も5分から10分位と短時間であり、事務的で雑だったと批判。一時金対象者に該当しないとした判定は間違いであるとして、非該当判定の見直しを求めました。

 大学病院の医師が作成する検査所見書は、主治医が作成する提出診断書とともに、県の判定検討会に提出される重要な資料で、県知事は判定検討会の意見に基づいて一時金対象者に該当するかどうかの判定を行います。

 異議申立ての審理は、今後、いよいよ本格的な審理に入ります。県は、専門家に鑑定を委嘱し、その鑑定結果をふまえて異議申立てが理由があるかどうかの判断を行い、異議申立ての理由があると判断すれば、異議申立人に行った非該当処分を変更することになります。

 特措法に基づく一時金の支払いは、政府が関係事業者(昭和電工)に対して、一時金を支払うことを要請し、関係事業者はこの要請があった場合に一時金を支給すると定められており(第5条4項5項)、政府の要請が必要です。

 これまで環境省は、異議申立ての審理については、「県と連絡を取りながら審理の推移を見守りたい」としながらも、一方では「国の考え方に変更はない」という姿勢をとり続けていますが、これでは混乱を深めるだけで、何の解決にもなりません。「水俣病問題の最終解決」を目的に制定された特措法の趣旨を、この機会にどのように生かすのか。いま、そのことが環境省に問われているように思います。

弁護士 中 村 周 而

 

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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