新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2014年10月14日

水俣病救済措置の判定結果をどう生かすか

 環境省は、8月29日、水俣病特措法に基づく救済措置の判定結果を発表しました。これによれば、平成22年5月1日から平成24年7月31日までの間に、熊本、鹿児島、新潟の3県で4万7906人が救済申請を行い、一時金(210万円)及び療養手当・療養費の支給対象者(一時金等対象者)に該当すると判定された人は3万2244人、申請者の67.30%にとどまりました。

 申請者と一時金等該当者の数を県別でみると、熊本県が2万7960人のうち1万9306人(69.04%)、鹿児島県が1万7973人のうち1万1127人(61.90%)、新潟県が1973人のうち1811人(91.78%)でした。このほか療養費(医療費)だけの救済が認められた人もいますが、全く救済が受けられない人(非該当者)は、熊本県が5144人(18.39%)、鹿児島県が4428人(24.63%)、新潟県が77人(4.30%)となっています。

 もっとも新潟県の場合は、まだ106人の判定が残っているため、今回の発表は8月22日の暫定値です。また新潟県では、一時金等対象者に該当しないと判定された人たちについて、非該当処分の取り消しを求める異議申立を認めており、現在、92人について異議申立の審理が進められています。

 環境省は、平成24年7月31日、多くの被害者団体の反対を押し切り、一方的に救済措置の受付を締め切りました。そのため非該当と判定された人や、それまで自分が水俣病であることに気づかなかったり、社会的偏見など様々な事情で申請手続ができなかった人たちは、特措法よりもハードルの高い公健法に基づく認定申請を行ったり、国や加害企業を被告として裁判を起こさなければならなくなりました。

 ご承知のように熊本、新潟、東京、大阪では、平成23年3月にノーモア・ミナマタ訴訟が和解で解決しましたが、その後、環境省が救済措置の受付を締め切ったため、水俣病被害者は、次々とノーモア・ミナマタ第2次訴訟の闘いに立ち上がりました。新潟県内でも、昨年12月11日、ノーモア・ミナマタ新潟第2次訴訟の第1陣が提起され、これまで46人の原告が国と昭和電工を相手に裁判を進めています。

 救済措置の判定結果が発表された際、石原伸晃環境大臣(当時)は、「これで救済の終了とは考えていない」とコメントしました。それから1ヶ月余りが経過していますが、今回の判定結果をどのように評価しているのか、水俣病問題の最終解決に向けでどのような取組をしようとしているのか、環境省からはそのメッセージは未だに発信されていません。

 水俣病特措法の前文には、国として水俣病の被害の拡大を防止できなかった責任を認めておわびし、水俣病被害者の救済を図り、水俣病問題の最終解決をはかり、環境を守り、安心して生活していける社会を実現するため、この法律を作ったという記載があります。国は、今回の判定結果を踏まえて、水俣病被害者を救済するための新たな救済システムを構築したり、水俣病特措法の救済措置を速やかに再開するなど、どうすれば水俣病問題の最終解決ができるのか、その具体的な施策を提示すべきはないでしょうか。

 もっとも、救済措置を再開するにあたっては、特措法自体を見直し、居住地域や居住年代等を理由に機械的に救済を排除しないことや、一時金等の非該当者にについて新潟県で実施されている異議申立制度を導入する等の是正も検討すべきでしょう。また、今回の判定結果で、救済割合が新潟県と熊本県・鹿児島県と大きな較差が生じた原因を解明することも必要でしょう。

 水俣病問題の最終解決をはかるために、今回の判定結果をどのように生かすのか。環境省にはその力量が試されているように思います。

弁護士 中 村 周 而

 

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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