新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2015年2月13日

昭和36年の「謎」

   昨年末の総選挙を契機に様々な分野で新しい変化が生まれるものと思いますが、被害発生から50年目を迎える新潟水俣病問題については、今年こそ全面解決に向けた展望を切りひらく年にしたいものです。昨年6月に超党派で結成された「水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会」の皆さんからも、できるだけ水俣病問題を国会で取り上げてもらい、大いに活躍していただきたいと思います。

   これまで水俣病問題については、裁判だけでなく、国会でも度々取り上げられてきました。平成21年7月に成立した水俣病特別措置法の前文では、「政府としてその責任を認め、おわびをしなければならない」と記載されていますし、第1条には、法律の目的として「水俣病被害者を救済し、水俣病問題の最終解決をする」と規定されています。

   しかし、残念ながら国には、水俣病問題について真剣に最終解決を図ろうとする姿勢は全く見られません。

   昨年11月に開かれたノーモア・ミナマタ新潟第2次訴訟での弁論のことですが、被告国から、昭和34年から36年当時、新潟の阿賀野川では水俣病被害が発生していなかったから、「非常事態ともいうべき危機的状況」ではなく、水質二法を適用して昭和電工鹿瀬工場の排水規制をすることはできなかったという主張が出されました。これに対し、原告からは、「それでは実際に被害が出なければ行政は動かないということではないか」という抗議の声が出ましたが、国の無反省な姿勢に改めて唖然とさせられました。

   たしかに新潟水俣病の公式発表は今から50年前の昭和40年6月であり、昭和34年当時阿賀野川に水俣病が発生したという報告はありません。

   しかし、昭和34年7月に熊本大学が有機水銀説を発表したことにより、水俣病の原因物質がチッソ水俣工場のアセトアルデヒド製造施設から排出される有機水銀であることが明らかになり、以後、国会でも水俣病問題が活発に審議されました。昭和電工鹿瀬工場をはじめとする全国のアセトアルデヒド製造工場(同種工場)でも、チッソと同じような水俣病発生の危険があるのでないか、その廃水についても調査すべきではないか、という指摘が相次ぎました。そして、水俣病国会調査団が結成され、昭和34年10月31日から11月4日の5日間にわたって現地調査が行われたのです。

   これを受けて当時の通産省や関係省庁も関与して作成された「水俣病に関する対策」案では、通産省が「同種工場について、除外施設、排水、環境等の調査を早急に実施する」ことや、経済企画庁が「水質保全法を早急に適用する」ことが決まりました。

   このように、昭和34年当時は、国会での審議や追求が大きな役割を果たして、昭和電工をはじめとする同種工場に対しても、水俣病発生の危険があるとして、その対策が検討されていたのです。

   その後、昭和35年2月に、通産省、厚生省、水産庁、経済企画庁によって、水俣病総合調査研究連絡協議会が設置され、全国の同種工場の排水の水質調査を通産省が担当することになりました。通産省は、依頼先の東京工業試験所から「同種工場排水分析結果」のデータを受け取り、昭和36年3月に開催された協議会に提出した形跡がありますが、協議会でその結果をどのように検討したのかは不明です。このデータでは、すべての同種工場の排水中にチッソ水俣工場の排水よりも高値の総水銀量が検出されていますが、国は、このデータが発表されることを恐れて議事録も作成せず、昭和36年3月の開催を最後に、協議会自体を丸ごと「自然消滅」させているからです。

   新潟水俣病が発生した直後の国会で、当時の新潟2区選出の石田宥全代議士が度々この問題を取り上げ、政府に対して、なぜ、協議会を「解散」させたのかを鋭く追及しています。国会議事録を読むと、石田議員の迫力が伝わってくるのを感じます。私も、今年はこの昭和36年の「謎」の解明に挑戦したいと思っています。

  弁護士 中村周而

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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