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2015年9月29日

あらたに2人が新潟水俣病に認定


 新潟県と市は、9月2日に開かれた新潟県・新潟市公害健康被害認定審査会の答申を受け、9月15日、新たに2人を水俣病患者に認定、6人の申請を棄却、2人について処分を保留したと発表しました。認定されたのは阿賀町に住む神田栄さんと神田三一さん兄弟。いずれもノーモア・ミナマタ新潟第2次訴訟の原告で、兄の栄さんは原告団の副団長を務めています。

 

 今回の認定審査会は、これまで運用されてきた狭い認定基準を事実上否定した平成25年4月16日の最高裁判決を受けて新潟県で最初に開かれただけに、その結果が注目されていました。

 

 平成25年最高裁判決は、水俣病の認定にあたっては、①個々の患者の症状等についての医学的判断だけでなく、曝露歴や生活歴及び種々の疫学的な見地や調査の結果を十分考慮し、「多角的、総合的見地からの検討」が必要、②感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的な実証はない、③複数の症状の組み合わせがない患者も認定される余地があると判断しました。

 

 環境省は、この判決を受け、平成26年3月7日に「水俣病の認定における総合的検討について」の新通知(追加通知)を出しましたが、「総合的検討」を口実に、患者の体内の有機水銀濃度の値などの客観的資料の提出を患者に要求するなど、これまでの被害者切り捨て策をさらに強化することになりかねないという批判が高まっています。

 

 新潟県の泉田知事は、今回の審査結果について、「最高裁判決等を受け、申請された方々の曝露状況について4人の参考人の方々に意見を聞くなど、より総合的かつ丁寧な認定審査が行われたものと受け止めております」というコメントを発表しましたが、実際に審査の現場で、「多角的、総合的見地」から具体的にどのような検討がなされたかは不明です。

 

 県の認定審査会の西沢豊正会長は、今年の5月21日に新潟市で開かれた日本神経学会学術大会で、これまでの国の判断基準は、「重症以上の人を迅速に認定するためにつくられた基準だけで運用されており、中等症・軽症への対応が欠けている」としてこれまでの認定制度のあり方に異議を唱え、「今後は環境省の追加通知に基づいて判断することになる」と述べました(2015年5月28日新潟日報朝刊)。

 

 認定審査会が、重症者だけでなく、中等・軽症者も含めて幅広い救済を行うのかどうか、同時に環境省の新通知がどのように運用されるのか、今後の審査結果にも注目しながら、検証する必要がありそうです。

 

 なお、熊本県は、「環境省と国の公害健康被害補償不服審査会の判断が食い違っている」として、約2年4か月にわたって認定審査業務を休止していましたが、今年7月、「最高裁判決を最大限尊重する認定行政ができる状況が整った」として審査を再開しました。しかし、9月7日、認定審査会の答申に沿って、30人の申請を棄却し、5人について処分を保留したと発表しました。

 

(弁護士 中 村 周 而)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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