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2017年9月19日

「残業代」が無くなる!?

1 現在、政府は専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」と、残業時間の罰則付き上限規制を一本化した労働基準法改正案を今秋の臨時国会に提出する方針であると報道されています。この法案の趣旨は「働き方改革」とか「労働時間ではなく成果で評価する」とか説明されています。

2 この法案は、年収1075万円以上の高度な専門業務に就いている人について、労働時間規制の対象から外すというもので、具体的には、①特定高度専門業務(コンサルタント業務、金融商品開発など)に従事していること、②平均賃金額の3倍を相当程度上回る水準の賃金額である場合には、現在の労働時間の法規制の枠を外すことになります。

3 では、この法案の何が問題なのでしょうか。現在、労働時間の法規制としては、原則として1日8時間、1週間で40時間を超える労働は禁止とする労働時間の規制や、休憩時間や休日に関する規制があります。この規制の趣旨は、働く人の健康を守ることにあります。この法案が成立すると、使用者も労働者も「高い成果」を求め、健康を損なう程度に働き過ぎる人が増えるおそれは十分にあります。年収があるからといって、健康を損なってしまえば何のための仕事かわかりませんし、本末転倒というほかありません。

4 なお、対象となる専門業務ではないから自分は関係ないのでは・・・?と思うかもしれません。しかし、「派遣社員」の対象が広がったように、対象となる業務がなし崩し的に拡大する可能性は十分にあります。そうすると知らない間に自分の仕事も労働時間の法規制から外され、「残業代がなくなる」という日が来るかもしれません。

5 また、労働時間規制の罰則化と「法案を一本化して提出する」という方法にも違和感を感じます。2015年の安保法案の審議の際のように、「法案を一本化」することで、国会審議に費やす時間は相対的に少なくなり、議論が尽くされないことを懸念するためです。

今秋の国会では、労働時間法制に関する国会審議について市民の皆さんが強く関心を寄せることが大事になってきています。

弁護士 二宮淳悟

著者:

2010年12月 当事務所入所 ・2012年~新潟県弁護士会 東日本大震災復興支援対策本部 本部長代行 ・2015年~新潟県弁護士会 憲法改正問題特別委員会 副委員長 ・2019年~新潟県弁護士会 糸井川大規模火災対応本部 事務局長 ・2020年~新潟県弁護士会 学校へ行こう委員会 副委員長 ・2023年~新潟県弁護士会 刑事弁護委員会 副委員長  ・2012年~日本弁護士連合会 災害復興支援委員会 運営委員 ・2018年~関東弁護士会連合会 災害対策委員会 副委員長

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