2022年1月24日
「ちむ」にはふたつの意味がある
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、今年春からのNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)は「ちむどんどん」が放映される予定です。内容は、沖縄出身の女性が上京しシェフを目指すというストーリーのようです。
「ちむどんどん」とは、沖縄の言葉で、(高揚して)胸がドキドキ、ワクワクすることを指します。「ちむ」の語源は「肝(きも)」であり、沖縄の言葉では、「き」が「ち」に、「も」が「む」に変化するため(ただし、例外も多くある。)、「きも」が「ちむ」となります。
「ちむ」(肝)は、文字どおり「肝臓」を意味することもありますが、「心」の意味で(複合語として)多く使用されています。例えば、「ちむぢゅらさん」(肝清らさん、肝美らさん)は直訳すれば心が清い、美しいということで、心が優しい、情け深いということであり、「ちむぐくる」(肝心)は心という意味を重ねて「心」を強調するもので、真心とか精神といったことを指します。
ところで、今年なぜ沖縄にちなんだ朝ドラが製作されるのでしょうか?
今年2022年は、1972年に沖縄の施政権が米国から日本に返還されてからちょうど50年目にあたります。サンフランシスコ平和条約(1951年調印、翌年発効)により日本の殆どの部分の占領が終わったのに対して、小笠原諸島、奄美諸島、沖縄はそこに含まれず、沖縄に関しては1972年5月15日にようやく復帰しました。
今年はそれから50年の節目の年ということで、沖縄県が朝ドラの舞台となるということのようです。
しかし、戦後77年、復帰50年を経てもなお、沖縄では戦争及び占領の傷跡は消えておらず、例えば、沖縄戦の不発弾の処理に今後70年かかると言われていること、国土面積のわずか0.6%の沖縄県に約70%の米軍専用施設が現在も集中していること、米軍基地の存在に起因する事件、事故が後を絶たないことなど、沖縄県民は今なお過重な負担を強いられています。
行政の最大の使命は、国民の生命、身体、財産を守ることです。沖縄県民の生命、身体、財産を守るため、米軍基地問題については、政府が県民の言葉に真摯に耳を傾け、米国と本気で交渉し基地の縮小・移転を進めること、日米地位協定を改定することなどが必要です。
沖縄の日常から、前記のことから生じる「ちむがかい」(肝掛り:気がかりのこと)、「ちむさわじ」(肝騒ぎ:不安、心配により心が穏やかでないこと)が解消されることを切に願います。
弁護士 小 淵 真 史
(事務所誌「ほなみ」第131号掲載)
アクアリウムのすすめ
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