2018年1月16日
チキン弁当
<事務所誌ほなみ第123号掲載>
チキン弁当歴40年
裁判や会議でたまに東京へ行く。つまらない会議だとしても、東京駅弁「チキン弁当」(850円)が食べられるという思いが心を救ってくれる。午前中の裁判であれば帰りの新幹線の昼食として、午後の会議であれば帰りの夕食として。
東京駅のホームで買ったチキン弁当とお茶ボトルを抱え、新潟行きの新幹線に乗り込む。適当な席にすわり、倒したテーブルの上に置く。ネクタイを緩める。「出発前に駅弁を食べ始めるのは邪道だ」と何かの雑誌で読んだことがあるが、そんなこと知ったこっちゃない。食欲の高ぶりが優先する。
チキン弁当は東京オリンピックの年(1964年)に発売された。当時の値段は200円だったという。私がチキン弁当を愛し始めた1970年代後半ころは400円くらいだったと記憶している。東京の大学にいた頃で、当時はまだ新幹線はなく在来特急「とき」が片道4時間かけて動いていた。以来、故郷へ帰る時の駅弁はチキン弁当と決まっていた。
チキン弁当のだいご味
バスケット風の紙容器を開ける(添加物がやたらと書いてある大きなシールで封印されていて、これを切らずに上手に剥がすには多少の技術が要る)。左に、多少の卵そぼろと数粒のグリーンピースが乗ったチキンライス(と言うかケチャップライス)。右に、鶏の唐揚げ(昔から4個。レモン汁付き)とつけ合わせ(最近はポテトサラダとスモークチーズ)。
左右の面積は同じ。色合いは、左は赤に黄に緑と鮮やかな信号機色、右は茶色系で地味だ。食欲をかき混ぜるような色彩のハーモニーである。
チキン弁当の作法
小さく「いただきます」をし、まず、左のケチャップライスを少し箸先にのせ、静かに口に入れる。小さい頃、親に連れて行ってもらい、町の食堂でオムライスを初めて食べた時、中身のケチャップライスに「これが洋食というものか」と感動して以来、この味が好きだ。
卵そぼろとグリーンピースをつぶさぬよう箸でつまんで口に入れたあと、次に、右に待たせていたチキンに挑む。待て待て、その前に添えられた小袋のレモン汁をかけなきゃ。このチキンはなぜか色が黒ずんでいて衣が固い。具も小さい。一個つまんで口に入れる。よく噛みしめて味わって欲しいという調理人の思いを感じる。
そんなことに集中していると、列車はいつの間にか東京駅を出発し、上野駅を通過し、赤羽駅付近のトンネルを通過し、いきなり視界が開けた。
あとは、お茶を飲んで一服しながら、右の作法を繰り返す。
チキン弁当への感謝
だいたい大宮駅の手前あたりで完食する。腹八分目くらいでちょうど良い。小さく「ごちそうさま」をし、紙容器を元の形にする。最後に、封印シールを張り直して買った時に姿に戻す。
退屈な出張をささやかでも慰めてくれてきたチキン弁当、ありがとう。これからもよろしく。
弁護士 金 子 修
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