新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

電話番号:025-245-0123(受付日時:平日9:00~17:00)
受付日時:平日9:00~17:00

相談受付フォーム(予約専用)

相談受付フォーム(予約専用)

2011年9月28日

幼保一体化は子どものためになる!?

  現在、政府は、新たな子育て支援の制度設計に向けて、「子ども・子育て新システム検討会議」において検討を進めています。子ども・子育て新システムとは、幼稚園と保育園を一体化するなど、主に幼児期の子ども関連の国の施策や補助金を一元化するためとして政府が提起した「制度」改革案です。新システムの目的の一つが、待機児童の解消や多様な保育需要を満たす必要性などを受け止めて、その解決を図ろうとしている点については、大いに評価できます。
 しかし、新システムは、幼稚園・保育所の垣根を取り払って、幼児教育と保育をともに提供するこども園に一体化する方向で議論がなされていますが、保育所と幼稚園は、児童福祉法と学校教育法という異なる法制度のもとで長い年月をかけて各々の制度を充実させ実践を積み重ねてきたものです。現場への影響や当事者の意見を聞きながら慎重に議論を尽くすべきだと思います。
 特に保育所は、就労家庭だけでなく、疾病の保護者を抱えた家庭など、多様な困難を抱えた子どもたちの入所が予定されています。そこでは、親の経済格差等にかかわりなく、「保育所における保育」がひとしく公的に保障されてきました。このような保育環境で、子どもたちが、互いに影響を与えあって成長発達しています。子どもたちが日中の大部分を共に過ごし、共に育つ「生活の場」であり、そこでは、いろんな子どもたちが、兄弟のように生活し、育っていくことができるのです。このような保育所の福祉的機能を崩壊させてはいけないと思います。
 また、新システムは、サービス利用量に応じて一律の負担割合で利用者が自己負担する介護保険型の制度設計になっています。保護者と事業者との直接契約となっていて、保育料も現在の収入に応じた応能負担から、利用に応じて負担が増える応益負担となります。これによって要保護性の高い児童ほどサービス利用料が増え、自己負担金が高くなることになり、保護者の経済力によって、要保護児童に必要十分な保育サービスが提供されないこととなりかねません。
 果たして、現行の保育制度を廃止して、新システムを構築しなければならないような問題点が現行の保育所制度に存在しているのでしょうか。子どもの貧困、子育て困難が広がり、待機児童解消が緊急の課題となっている状況を踏まえると、予算の大幅拡大によって現行保育制度を拡充することが求められていると思います。 

                    弁護士 小川和男

著者:

問題を抱えているにもかかわらず、誰にも相談できず悩んでいる方は多いのではないでしょうか、そのような方々が気軽に相談できる弁護士でありたいと思っています。まずはお話を聞かせてください。

« 次の記事
トップへ戻る
新潟合同法律事務所