2012年5月18日
裁判員制度 今、何が問題なのか
(事務所誌「ほなみ」第111号掲載)
裁判員制度が開始されて3年が経過しようとしています。昨年末現在で3200件以上の判決が言い渡され、18000人を超える人が裁判員を務めています。
全国各地では、裁判員経験者と法曹三者の意見交換会が実施されており、そこでは、「良い経験になった」などという意見も多く聞かれ、国民の刑事司法に対する関心は確実に高まっていると言えます。
一方で、裁判員制度を巡っては、法曹界、マスコミからもさまざまな意見が出ています。対象の事件を絞るべき、対象事件を拡大すべき、守秘義務を緩和すべき、検察官はすべての証拠を開示すべき等々です。その中でも特に裁判員の負担を軽減すべきであるという意見が多く聞かれます。
確かに一般市民の皆さんにとって、重大事件の審理は重圧です。長期間の拘束が負担を強いている現実も否定できません。
しかし、裁判員裁判においても、まず考慮されるべきなのは、被告人の適正手続を受ける権利です。裁判員の負担を理由に不十分な審理期間しか与えられず、結果として被告人に十分な防御の機会が与えられない事態が生ずるとすれば、それは本末転倒です。
実際に裁判員を経験された人たちから「もう少し時間が欲しかった」「人の一生が決まってしまうかもしれないことなので、日数が増えてもかまわない」という声が上がっているのも事実です。
もちろん、裁判員の負担軽減に向けた制度改善のための努力をしていくのは当然ですが、ただ、その場合でも「被告人の適正な手続きを受ける権利」を常に頭に入れておく必要があります。
裁判員法は、「3年後に見直しを検討する」としており、日弁連も、死刑判決の厳格化、対象事件の拡大などを内容とする法律改正の提言をしています。
裁判員制度は、まだ実施期間が短く、事例が十分に集積されているとはいえない状況ですが、これまでの事例報告や最高裁による調査資料からも、制度上あるいは運用上、多様な問題点が存在していることは明らかです。
私たちは、公正な刑事裁判の実現という基本的視点に立ったうえで、裁判員制度の下における被告人の防御権の保障をより万全のものにするため、また、市民参加をより積極的なものとするために検討していく必要があると考えています。
弁護士 小 川 和 男
著者:小川 和男
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