2018年12月28日
高校野球の球数制限について
1 先般,新潟県高野連が,2019年春の大会で投手の球数制限(100球を超えると次の回投球できない)を決定し,話題になりました。
これについて賛否両論があるようですが,まず賛成派は,けがの予防,負担軽減につながる,多くの選手が試合に出場できるようになりレベルアップになるといった理由を上げているようです。一方,反対派は,複数の優秀な投手を集めることができる強豪私学しか勝てなくなる,完全試合のような大記録がかかった試合でも球数で降板させるのかといったことを反対の理由に上げているようです。
また,関連して,公式戦だけ球数制限を設けても練習や練習試合で酷使されれば意味がない,越境入学や野球特待生を規制すべき,連投を強いる日程をまず見直すべきだといった意見もあるようです。
2 私は,結論としては球数制限については賛成したいと思います。
理由は,一番はやはりけがの予防ということになります。
高校生は身体的にまだ発育途上であり,その段階で肩や肘を酷使するのは避けたほうが良いのではないでしょうか(身体面の問題)。
また,大人であれば,自分の判断で練習や投球を制限できますが,例えば,高校野球でエースを託された投手が,もし,大事な試合の前に肩が痛い,肘が痛い状態になった場合,それを本人から監督やチームメイトに正直に言えるでしょうか。おそらく,チームメイトに迷惑をかけたくないという思いや,監督の期待に応えたいという気持ちが上回り,言えないのではないかと思います(精神面の問題)。無理をすればケガのリスクがより高まることは必定ですので,大人の側が保護する何らかの仕組みを作っておくべきと考えます。
また,前記の関連意見のうち,練習や練習試合で酷使されれば意味がない,連投を強いる日程をまず見直すべきといった意見はもっともであり,公式戦での球数制限だけではなく,こうした取り組みも併せて行ってほしいと思います。
球数制限に反対の理由として,強豪私学しか勝てなくなる,完全試合ペースでも球数で投手交代になるのかといった意見に対しては,何に優先順位を置くのかという問題で,けがから身体を保護するということ以上に優先すべきこととは思いません。
3 高校卒業後にプロ,実業団,大学等で,競技としての野球を続ける人もいますが,それはトップレベルの一握りで,高校球児の多くは,高校までで競技としての野球を終えます。
しかし,そこで野球人生が終わるわけではありません。日本にはいわゆる草野球があり,レジャーや親睦のために野球を楽しむことができます。そういう意味では,やる気さえあれば,30代,40代になってもプレーできる環境があり,さらに還暦野球なるものまであって,野球は体が動く限りできるスポーツと言えます。
こうした先の人生を考えた場合,もし,高校時代の投球過多によるケガでその後の野球人生が奪われてしまうことがあるのならば,本人にとっても,将来野球仲間になったであろう人たちにとっても,不幸なことではないかと思います。
高校野球が終わった後も,多くの人に,その先に長く野球を楽しんでもらいたいという観点からも,まずは球数制限を取り入れてはどうかと思います。
4 肩や肘が痛い状態で野球をしても,はっきり言って楽しくありません。楽しいはずの野球が苦痛になってしまうので,まだ将来のある高校生にそのような思いをしてほしくないと思います。試合開始時に審判が言う「PLAY BALL」の直訳は,ボールで遊びなさいということです。今回の球数制限の議論を機に,高校を卒業後の先の人生においても,多くの人がボール遊びを続けていけるようになることを願います。
弁護士 小淵真史
著者:小淵 真史
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