新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2019年1月21日

ブー子の思い出

(事務所誌ほなみ第125号掲載)

今年はイノシシ年。最近イノシシは人里に出てきて暴れる“害獣”扱いされています。イノシシに似た動物にブタがいます。

私の実家は小規模なコメ農家で、現金収入を得るため、父は勤め人、母は内職、それと家畜としてブタとニワトリを飼っていました。ニワトリは卵と動物性タンパク質を得るため、ブタは子豚を業者から預かり肥育し大きくして業者に返しその肥育料をもらっていました。物心ついた時からニワトリとブタはわが家にいました。

朝食前の玄関そうじと家畜の餌やりは子どもの仕事で、私と弟は毎日交替でやっていました。豚舎はニワトリ小屋のすぐ隣で、畳3畳ほどのコンクリート敷きで、そこに稲わらを敷きつめた簡単なものでした。担当の朝は、トウモロコシが入った人工飼料と家の畑の野菜くずなどを与えていました。何日かごとに汚れた敷きわらを新しいわらに取り換えました。

ブタの汚したわらの臭いは強烈で、子ども心にも嫌でした。思い切って息を肺に溜め無呼吸でえさやりをしましたが、堪えきれず豚舎内で思いっ切り深呼吸したりしていました。

ある日、また子豚が2頭やってきました。そのうちの1頭が、ピンク色のかわいい姿で、大きな目でオドオドして回りを見まわしていて、思わず抱いてやりたい気持ちが沸きました。抱くと温かい。雌か雄か分からないまま“ブー子”と名付けました。

私は豚舎でブー子に会うのが楽しくなりました。朝の当番を連続してブタ・ニワトリ小屋にしたり、小学校から帰ると家に入る前にブー子の様子を見に行きました。ブー子も私が来るとすぐ寄ってきて見上げてブーブー嬉しそうな声を上げてくれました。嫌だった稲ワラ交換も苦でなくなり、ブー子ともう一頭(名無し)も私が稲わらを交換するまでおとなしく待っていました。ご褒美にと、学校の給食をわざと残してあげたり、家にあったお菓子をやったりしました。

だいぶ大きくなってそろそろ引き取られる時期になると、私は何となく切なくなり、餌やりも黙ったままになっていきました。

ある日学校から帰ると、豚舎が静かでした。恐る恐る覗いてみる汚れた藁が散乱しているだけでした。その日の夕食は黙ったまま食べました。あとで父に聞くと、私が寂しがると思い引き渡す日を黙っていたそうです。その夜ブー子の夢を見たはずですが、遠い昔なので中身は思い出せません。

もし引き渡しに立ち会って、ブー子のそのクリッとした目で見つめられたら泣いていたでしょう。ワナにかかって檻に入れられたイノシシがカメラをじっと見つめる映像を見ると、今でもブー子とだぶってしまいます。

弁護士 金 子  修

 

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