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2020年9月10日

鎔岩流

昨年晩秋、岩手県八幡平にいく機会があり、岩手山の北東山麓に広がる「焼走り熔岩流」を散策した。散策路から枝分かれした狭い観察路の石段を何段か登ると、黒々と広がる熔岩の彼方に山頂が雲に隠れた岩手山が迫っていた。熔岩の足場を一歩一歩確認し、鎖で画された観察路を進んだが、近くに草木はなく、岩の表面に生育する苔や地衣類が目についた。

熔岩流の噴出は1719年といわれていたが、最近の研究では1732年が定説。「焼走り」の名前は火山の中腹部の噴火口(寄生火山)から流出した真っ赤な熔岩流が山の斜面を急速な速さで流下するのを見た当時の人々が「焼走り」と呼んだことに由来するという。熔岩流の延長は約4キロメートル。このうち149ヘクタール余りが国の特別天然記念物に指定されている。草木が殆どないのは、噴出時期が比較的新しくて風化作用が進んでおらず、表面には土壌が形成されていないためだという。

観察路を引き返して散策路を進むと、展望台のすぐ近くに宮沢賢治の「鎔岩流」の詩碑があった。賢治の童話は多くの人に親しまれている。岩手生まれの私も啄木と賢治の本は比較的多く読んできたが、賢治の「雨ニモマケズ」以外の詩になると、じっくり読んだことがない。理解するには時間がかかる。四十数行の「鎔岩流」の詩もそうだった。

詩の出だしの数行がよくわからない。この地に来た賢治が、「ここは空気も深い淵になってゐて/ごく強力な鬼神たちの棲みかだ」と感じ、「あぶなくその一 一の岩塊(ブロック)をふみ/すこしの小高いところ」に登ったあたりまでは分かるのだが、その後の部分は読めない漢字もあり難解で、カメラにおさめた。

この7月末、それまで新型コロナウィルス感染者ゼロの記録を更新していた岩手県についに感染者が出たというニュースが報じられた。これだけ蔓延すれば岩手県に出てもおかしくないのだが、それにしても岩手はよく頑張ったのではないか。そんな思いとコロナの広がりを心配しながら、あのときカメラにおさめた「鎔岩流」の詩を読み返している。

弁護士 中 村 周 而

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