2012年5月7日
「うつ病を発症したのは、上司による叱責が原因」として労災不支給処分を取り消す勝訴判決!
Aさんは1992年に、清掃用品や清掃用ユニホームを扱う会社に入社し、順調な営業成績を残してきました。しかし、2000年頃から、当時の上司から日常的に厳しいノルマを課せられ、毎日のようにノルマの達成について問い詰められ、Aさんは徐々に「うつ状態」となってしまいました。 その後も、上司から厳しく指導・叱責されることが日常化し、2005年12月から2006年1月に「うつ病」と診断され、同年9月に退職を余儀なくされました。
このため、退職後、Aさんは労災による休業補償給付を新潟労働基準監督署に申請しましたが、監督署は「うつ病発症6か月前の出来事を総合して判断する」という国の判断指針に従うと「上司の叱責等が原因とは認められない」として給付をしないとする決定(不支給処分)をしました。
Aさんは、うつ病を発症したのは他でもない上司の叱責等が原因であると主張し、労災であることを認めるよう訴えてきました。裁判のポイントは、①うつ病が労災かどうかを判断するにあたって考慮されるのが「うつ病発症前6か月の出来事に限られるかどうか」という点と,②上司の叱責等が「業務による強い心理的負荷が認められる場合」にあたると評価されるかでした。上司による叱責やノルマによるストレスは徐々に蓄積されるものであって、うつ病発症前6か月の出来事だけを考慮することにそもそも合理的な理由はありません。
本年4月27日、新潟地方裁判所は、いじめやセクハラの事案ではないが、上司による「指導や叱責、ノルマが達成できなかったという出来事は繰り返されていた」ことを理由に、発症前6か月間のものだけ限定するのではなく、「その開始からのすべての行為を対象として」判断すべきだとして、「業務による心理的負荷が病気を発症させた」として、この不支給処分の取り消しを命じました。 現在、国や被告会社が控訴するかは未定ですが、Aさんは上司のパワハラを放置した会社に対しても、安全配慮義務違反と使用者責任を追及する裁判も行っています。今後ともAさんのご支援をお願いします。
なお、担当弁護士は土屋・二宮です。
著者:土屋 俊幸
パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。