2021年8月20日
「81マスの宇宙」のエクスプローラー
近年、民間人が宇宙旅行に行くことが話題になっています。本物の宇宙へ行くには宇宙船に乗らなければなりませんが、この地上にも「宇宙」に例えられるものがいくつも存在します。
そのひとつが、藤井聡太二冠の活躍により注目されている「将棋」です。
将棋盤のマス数(9×9=81個)は子どもでも数えられますが、局面の出現パターンは10の69乗とも220乗ともいわれる途方も無い数であり(前提条件により計算が異なるようです)、それゆえ、将棋は「81マスの宇宙」といわれます。
将棋では、客観的な情報がすべて明らかになっており、トランプや麻雀のように「運」が入り込む余地はほとんどありません。
それでありながら、プロ同士の対局は、紙一重で勝負がつくことが多く、プロの対局で一手差勝ち(負け)という対局は日常茶飯事で、一手差は、僅差でもあり、大差でもあると言えます。
そもそも、プロ棋士になるには、奨励会という養成機関に入り(6級~三段)、原則として、最上位の「三段リーグ」で成績上位2名(年間4名)だけがプロ棋士(四段)になれます(現在プロ棋士はわずか170名ほど)。
将棋のプロ棋士は、このようにして選びに選びぬかれた精鋭で、その中で、年間勝率が6割であれば「強い」棋士と言えるでしょう。つまり、10局のうち5勝5敗から、ひとつだけ負けを勝ちに変えるということだけでも大変な世界ということです。
これが、年間勝率6割6分7厘(2勝1敗ペース)まで上がると、プロの中でも「相当強い」、年間勝率が7割となると、単に「強い」を超えて「勝ちまくっている」という印象です(年間勝率7割以上の棋士は毎年5~10人くらい)。
年間勝率8割以上となると、もはや神がかり的というほかありません。年間勝率8割以上は過去にのべ20回ほどしか達成されていないのですが、藤井聡太二冠はプロデビューから4年連続で勝率8割超えを続けており、言葉で表現が困難なくらいの超人的な強さとしか言いようがありません。
ところで、現在、多くの将棋ファンが待ち望んでいることがあります。それは、藤井聡太二冠と羽生善治九段の二大天才棋士によるタイトル戦です。
羽生善治九段については、今さら説明不要ですが、永世七冠、タイトル獲得99期(歴代最多)、通算勝利数歴代1位ほか数々の称号・記録を持つ最強棋士です。
このお二人とも、将棋の真理を探求したいということを述べていたと記憶しています。
お二人のタイトル戦がもし実現すれば、まさにドリーム・マッチであり、将棋史に残る名勝負になることは間違いありません。
弁護士 小 淵 真 史
(事務所誌ほなみ第130号掲載)
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