2017年1月23日
トリの受難
(事務所誌ほなみ第121号掲載)
明けましておめでとうございます。今年の干支はトリですが、昨年11月末ころから新潟県下でも発生している鳥インフルエンザの問題が気がかりです。マスコミ報道によれば、11月28日、新潟県関川村の養鶏場から、「不審な死に方をしているニワトリが増えている」という通報を受けた県が、亡くなったうちの5羽を簡易検査。いずれも鳥インフルエンザウィルスの陽性反応が出たため、この養鶏場への立入りを制限し、養鶏場から半径10キロ以内にある約60の養鶏場に、ニワトリや卵などの移動を自粛するよう要請したとのこと。県中央家畜保健衛生所で遺伝子検査が実施され、翌29日、県内で初めての鳥インフルエンザの感染が確認されましたが、30日には、被害は上越市にも広がりました。この間、政府は、29日に関係閣僚会議を開き、安倍首相は、関係各省が緊密に連携して徹底した防疫措置を迅速に進めること、国民に正確な情報を迅速に伝えることを指示したと報じられています。新潟県の鳥インフルエンザ問題に対する防疫対策は、12月上旬でひとつの山場を越えたようですが、環境省によると、「過去最大規模の流行になるおそれもある」として警戒を強めています。
今回の新潟県の対応で注目されるのは、養鶏場からの通報を受けた後の迅速な対応です。職員や自衛隊、市職員が投入され、29日午後4時30分から24時間体制で合計54万羽の処分や養鶏場の消毒、清掃、鶏の埋却等の作業が進められたのはマスコミでも大きく報じられたとおりです。高病原性鳥インフルエンザに罹った鶏(患畜)が飼育されている養鶏場で飼育されている鶏は全て疑似患畜と判定され、家畜伝染病予防法16条で、直ちに処分をすることが義務づけられており、農水省の「特定家畜伝染病防疫指針」によれば、原則として患畜又は疑似患畜と判定された後24時間以内に処分を完了することとされています。「24時間以内」に数十万羽の処分を行うのは決して容易な作業ではないと思いますが、県は万が一の鳥インフルエンザの発生に備え、県本庁、地域振興局、家畜保健衛生所が連携して全庁ぐるみで対応措置を講じ、机上演習や防疫訓練を行い、防疫計画も作成しているようです。
もうひとつ注目したいのは、前述したように法律で患畜と同じ養鶏場で飼育されている鶏などを全て疑似患畜とみなして徹底した対応を定めている点。熊本水俣病はチッソ水俣工場が排出した排水中に含まれるメチル水銀に汚染された水俣湾の魚介類を多食することで発症しますが、昭和32年9月、厚生省は熊本県の照会に対し、「水俣湾内特定地域の魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められない」という理由で食品衛生法を適用して水俣病内の魚介類の採取規制をすることを認めなかったため、水俣病被害はさらに拡大したことが思い出されます。
今回の鳥インフルエンザの問題は、鳥にとっては大変な受難ですが、行政がどのように対処すれば、国民の生命や健康、安全を守ることができるのかの指標を示しているように思います。
弁護士 中 村 周 而
著者:中村 周而
さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。
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