2020年9月11日
暴風雨と、保険会社からの請求
台風のシーズンを迎え、水害や台風の被害にあった場合に備えて、建物に保険をかけていると思いますが、自宅の瓦が飛んだり、建物が壊れて、他の家に被害を与えてしまう場合の備えも必要です。
新潟は2月から4月にかけて、日本海で急速に発達した低気圧によって瞬間最大風速35mを超える暴風が吹き荒れ、樹木が折れたり、建物等の損傷被害がしばしばあります。
ところで、Aさんは平成30年3月1日から2日にかけて起きた暴風雨によって、資材置場の物置小屋の屋根が吹き上げられ、トタン屋根が壊れて飛んだり、小屋の柱が土台から折れ倒壊し、小屋の屋根や壁が隣家に倒れ、数百万円の修理が必要な被害を与えてしまいました。
倒壊した物置小屋の後片付けも終わり、隣家は風水害被害の損害保険で修理をしたというので、「ほっと」したところ、突然、東京地方裁判所から訴状が送られきました。隣家の修理代を出した保険会社が隣家の人に代わって、Aさんに支払いを求める裁判を東京地裁に起こしたのでした。
保険会社は、暴風警報や注意報が出ているにもかかわらず、資材置場にあった資材を縛りつけたり、養生して飛ばないようにしなかったことが過失であるとか、物置小屋が暴風雨に耐えるだけの強度がなかったことから、建物の管理や保存についての注意を怠ったとして、建物所有者として賠償責任があると主張していました。
新潟市内では春先だけなく、冬にも強風が吹き荒れますが、Aさんは冬の強風の前に物置小屋を点検・補修をしており、物置小屋はこれまでの幾たびもの暴風に耐えてきていました。3月の暴風雨では15棟の畜舎等が破損するなどの被害が報告されているほどの強風で、自然災害としてAさんには責任がないといえるものでした。
しかし、新潟市内に保険会社の支店があり、隣家の修繕をした業者も市内の業者でしたが、東京に保険会社の本社があり、訴訟代理人の弁護士も東京の弁護士ということで、東京地裁に裁判が起こされたのでした。
新潟市内での突風、暴風の状況は地元に住んで、体験しないと実感することはできません。Aさんは、新潟地裁で裁判を行うように申立(移送の申立)を行い、東京高裁は建物の倒壊の状況を現地で見たりする必要があることを認め、新潟地裁で裁判をするよう命じました。
Aさんの裁判は新潟の気象状況を理解してくれた裁判官からの勧めもあって、請求された額の1割にも満たない額を保険会社に支払うことで和解が成立し、解決することができました。
Aさんの事例でも、火災保険や自動車保険などの特約で、個人賠償責任保険(補償特約)に入っていれば、自分の保険で対応することができました。低額な保険料でさまざまな賠償に対応していますので、個人賠償責任保険に入ることも防災の備えとして必要かと思います。
弁護士 土屋 俊幸
(事務所誌ほなみ 第128号掲載)
鎔岩流