2026年6月8日
最後の意思を形にするために ~危急時遺言を利用した事例~
先日、私自身初めて危急時遺言の作成に携わる機会がありました。
危急時遺言とは、病気などによって死亡の危急が迫り、通常の方式による遺言書の作成が困難な場合に利用できる特別な遺言制度です。あまり知られていない制度かもしれませんが、ご本人の最後の意思を実現するための重要な制度です。
今回ご紹介するのは、ホスピスに入所されていたAさん(仮名)の事例です。私はAさんから、遺言書の作成やご自宅の不動産売却についてご依頼を受けており、遺言書作成に向けた準備を進めていました。
ところが、その準備中にAさんの病状が急激に悪化し、いつお亡くなりになってもおかしくない状況となってしまいました。このままでは、Aさんが望まれていた内容を遺言として残すことができません。
そこで、施設の職員の方々にもご協力いただき、危急時遺言を作成することにしました。当日は、私、事務員、施設職員の方の計3名が証人となり、法律の定める手続に従って遺言を作成しました。その後、速やかに家庭裁判所へ確認の申立てを行いました。
残念ながらAさんはその後お亡くなりになりましたが、生前に希望されていた内容を遺言という形で残すことができました。ご本人の意思を実現するお手伝いができたことは、弁護士として大変意義深い経験だったと感じています。
危急時遺言は、まさに緊急時のための制度です。しかし、本来であればそのような状況になる前に、余裕をもって遺言書を作成しておくことが望ましいことはいうまでもありません。
もっとも、病状の急変などによって通常の遺言書作成が難しくなった場合でも、状況によってはご本人の意思を法的に残す方法があります。遺言や相続についてお悩みの方は、ぜひ早めに専門家へご相談いただければと思います。
今回の経験を通じて、改めて遺言の大切さと、最後まで依頼者の意思に寄り添うことの重要性を実感しました。Aさんの最後の意思を形にすることができ、本当に良かったと思っています。
弁護士 小川和男
著者:小川 和男
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