2021年2月5日
特別縁故者に対する相続財産分与ってなに?
新年おめでとうございます。今回の法律相談で取り上げるテーマは特別縁故者に対する相続財産分与です。
最近亡くなった相談者の従姉(いとこ)は病気で寝たきりの状態で、相談者が十年あまりにわたって病院への送り迎えや掃除洗濯、自宅の庭の手入れなど様々な身のまわりの世話をしてきました。従姉には自宅や預貯金がありましたが、亡夫の間に子どもがなく、両親も兄弟姉妹もいません。相続人が誰もいないということで、弁護士が相続財産管理人に選任されています。このままでは従姉が住んでいた自宅が荒れ放題になってしまうのではないかと心配です。相続財産管理人の話では、従姉の財産については、特別縁故者から相続財産分与の申立てをすることができるということです。
Q.特別縁故者って、どのような関係にある人ですか。
A.被相続人(本件では従姉)と生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者、その他特別の縁故があった者と定められています(民法958条の3)。あなたの場合は十年あまりにわたって寝たきりの従姉の身のまわりの世話をして、「療養介護に努めてきた」わけですから、特別縁故者と認められる可能性が十分にあります。
Q.相続財産分与の申立てはどこにするのですか。
A.従姉の最後の住所地の家庭裁判所に申立てをする必要があります。ただし、申立てをする期間についての定めがありますので、申立てをするにあたっては、予め家庭裁判所や弁護士に相談してください。相続人の存否が不明の場合、家庭裁判所から選任された相続財産管理人が従姉の債務を支払うなどして清算を行ったり、相続人を探索するための公告を行うなどして権利関係の調査を行った後、裁判所は特別縁故者に、「清算後残存すべき相続財産の全部又は一部」を分与する審判をします。しかし、特別縁故者からの申立てがなかったり、申立てが認められず、処分されなかった相続財産は、「国庫に帰属する」ことになります。
Q.申立てをする際、どのような点に注意したらよいですか。
A.あなたが従姉の「療養介護に努めてきた」ことを裏付ける資料を提出することが大事です。従姉がどのような医療機関で治療を受けていたのかを調べたり、あなたが具体的にどのようなことをして従姉の「療養介護に努めてきた」のかを陳述書にまとめたりしますが、これらの作業は弁護士と相談して進めたほうがよいでしょう。
弁護士 中村 周而
事務書誌「ほなみ」第129号掲載
福島原発被害救済新潟県訴訟の「結審」