2010年11月26日
裁判員裁判の弁護人を経験して思ったこと
少し前ですが、今年の9月上旬、裁判員裁判事件の弁護人を経験しました。真っ向から無罪を主張する事件でした(犯人は私ではない、私にはアリバイがある、というものでした。)。少し感想を述べます。
とにかく新鮮でした。自分の世界・業界の中へ外から風が吹き込んだという感じがしました。
「ひょっとして自分も被告人席に座るかも知れない」と思う人たちだから(職業裁判官も検察官もそんなことは思いません。)、今までの刑事裁判で通じなかった“常識”が通じるかも知れない、という期待感も持ちました。
しかし、その一方で、「無罪にすべき人を無罪に」「有罪の人には適切な量刑を」という目で見た場合、まだまだ職業裁判官のリードのままに、その敷かれたレールの上を走るだけで終わってしまいがちになるのではないか、という危うさも感じました。
判決に向けた議論(「評議」といいます。)をする際、職業裁判官から、「今までの判例ではこうなっているから」とか「こう考えるのが普通でしょう」とか言われると、「何か違和感があるけど、私は法律には素人だから、まァ、ここはプロに従うのが良いのかな」と妥協しがちです。“おとなしくて権威に弱い”と言われる私たち日本人の場合、納得いくまで議論し、プロの裁判官とも対等に意見を言い合える人、納得できないなら最後まで意見を曲げない、多数決まで行っても構わない、と考える人がどれくらいいるだろうか、と少し心配です。
裁判所のアンケートによると、裁判員を経験した人の多くが、「貴重な経験をした」「ふだん分からない世界を知ることができて良かった」「皆と議論できて良かった」という感想を持ったそうです。しかし、刑事裁判が「無罪にすべき人を無罪に」「有罪の人には適切な量刑を」という手続である以上、ただ「参加して良かった」にとどまってもらっては困ります。
これから裁判員になる方には、「ぜひ、プロに対しても遠慮せず意見を言ってください。そのために選ばれたのですから。」と言いたいです。私たち弁護人も、裁判員が「弁護人の言う通りだ」と自信を持って評議にのぞめるよう力を尽くさなければならないと考えています。
弁護士 金 子 修
著者:金子 修
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