2025年7月18日
親権者変更
現在の法制度のもとでは、離婚後未成年の子の親権者は父母どちらか一方に指定されます。いわゆる「単独親権」の制度です。しかしながら、2024年に法改正が行われ離婚後も父母が共同して親権を行使する「共同親権」制度が定められました。共同親権については2026年5月までに施行予定です。
さて、単独親権制度のもと親権者変更が認められたケースを紹介いたします。
離婚後未成年者は親権者となった母のもとで生活していましたが、母からの虐待を理由に児童相談所に一時保護されたことをきっかけに、非親権者である父が家庭裁判所に親権者変更の申立てを行いました。手続きとしては、①親権者変更・子の引渡しの審判申立てに加えて、②親権者の職務執行停止・職務代行者選任・子の引渡しの保全処分を申し立てました。
審判手続が進む中、未成年者の一時保護が解除となり母のもとに帰宅しましたが、約2カ月後には再び一時保護されその後施設入所となりました。この間、父は親権者である母を通じて未成年者に手紙を送るなどの間接交流しか行えなかったため、③面会交流調停を申し立てて施設入所中の未成年者との面会を求めました。その結果、調査官調査を経て③面会交流調停が成立したことから、いったん①②の申立てを取下げました。父は児童相談所の関与のもと月1回程度直接交流を10回ほど重ね、再び④親権変更・子の引渡しの審判申立てと⑤親権者の職務執行停止・職務代行者選任・子の引渡しの保全処分を申し立て、調査官調査を経て保全処分も含めて母から父への親権者変更が認められました。①②の申立てをしてから約3年、当時は小学校低学年だった未成年者も高学年になっていました。なお、「子の引渡し」については現状未成年者が母の監護下にないことから取下げました。
上記のケースは未成年者が児童相談所の一時保護を経て施設入所中という特殊事情があり、面会交流や親権者変更後の未成年者の引渡し等について、相手方である母との協議や調整等を行う必要はなく児童相談所の担当者と父で相談して進めることができました。
話は戻りますが、「共同親権」制度が施行された場合には「単独親権から共同親権への変更」という申立も選択肢として出てきますが、果たして親権を争っている父母が「共同」して親権を行使することができるのか、「子の最善の利益」とは何なのかを改めて考える必要がありそうです。
鈴木 麻理絵
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