新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2008年4月15日

「入学式」にて

 娘が小学校に入学した。親としては感慨深い。自分がはじめて小学校に通ったときの期待と不安が交錯する異様な高揚感をノスタルジックに回顧せずにはいられない。
娘が入学するという記念の日に,私が不謹慎にも個人的に少し注目していたこととして,日の丸・君が代をどのように取り扱うのかという点があった。
現在の学習指導要領では,入学式や卒業式において,「国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定められている。したがって,日の丸が壇上正面に掲揚され,君が代斉唱の機会があることは想定済みである。問題はどのように実施するのかであった。
式の冒頭に「一同御起立ください」との号令。全員起立する。そこで,壇上には誰もおらず,掛け声もないまま,ピアノの和音で「ターン,ターン,ターン」。お辞儀をするときに通例用いられるお馴染みの和音である。日本人はこの音を幼少の頃からお辞儀をする音として訓練されているので,誰もが条件反射的にお辞儀をしてしまう。私は「一同国旗に向かって礼!」などと掛け声がかかることを想定していたので,それならお辞儀をすまいと思っていたが,和音による条件反射には勝てず,不覚にも日の丸に敬礼してしまったと後で気付く。誰もいない壇上に向かって皆で礼をしている姿はある種滑稽なものがある。
学校がこのような方法をとった理由はわからない。号令をかける方法よりもソフトであるという見方はできる。確かに学校は音を鳴らしただけであって,命令をしていない。しかし他方,このような方向こそが文科省が目指している愛国心教育なのだとも考えてしまう。文科省は,愛国心を理屈で教え込むのではなく,日常の中にしみわたるように指導することを是としている。つまり,「国を愛することは良いことだ」と頭で考えて行動するのではなく,家族を愛し,母校を愛し,郷土を愛するのと同じ次元で,ナチュラルに,国を愛する精神を養うのが理想とされている。
そんな風に考えると,和音による条件反射の利用は高等テクニックなのかもしれない。ついつい,文科省が心理学者の協力を得て著作した道徳の副読本「心のノート」を思い出してしまう。
卒業式と入学式にとどまるならともかく,たとえば,全校朝会等の都度,同じことを繰り返されるようになったならば,子どもたちが,日の丸を見たら敬礼するのが当然と考えるようになってもあながち不思議ではない。
君が代の斉唱は,式の後半で校歌斉唱と一緒に行われた。保護者は私も含め斉唱しない人がかなり多いように見えたが,子どもたちはほとんど歌っていた。救いだったのは,校歌斉唱の方が何倍も子どもたちの声が大きかったこと。子どもたちにとって校歌と国歌はまだ同列ではない。
弁護士 近 藤 明 彦

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の方の納得を最優先にし、依頼者の方から感謝されることを目標に頑張っています。個人的には、以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が非常に多く、そのことが大変に励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えられるからです。

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