新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2010年7月26日

ノーモア・ミナマタ新潟訴訟第5回弁論

 昭電の対応の変化
 5月20日に開かれた前回の弁論で、原告から、「被害者の生の声をたくさん聞いてほしい」「信頼関係を実感できない」という厳しい注文や批判を受けた昭和電工だったが、この弁論を契機に対応に変化が生じた。
 5月26日には村田常務が新潟に来県し、阿賀野患者会の会員と面談して被害者の苦しみや訴えを聞いた。6月3日に開かれた3回目の事前協議では、井本専務も、「早い時期に新潟に行き、被害者の訴えを聞きたい」と申し出た。さらに井本専務は、患者会など新潟水俣病関係3団体が4月28日に開かれた2回目の事前協議で昭和電工に求めていた7項目の要望事項に対して、「謝罪の方法や被害地域との関わりも含めて、和解協議の中で早期解決をめざして真摯に対応したい」旨を表明をした。
 
 阿賀野患者会が和解協議入りを決定
 このような昭和電工の対応の変化や、鳩山首相(当時)の水俣病犠牲者慰霊式への出席などこの間の水俣病問題をめぐる動きをふまえ、阿賀野患者会は6月5日に開かれた幹事会で、和解協議に入ることを決め、早急に上申書を裁判所に提出することにした。新潟水俣病共闘会議も、6月9日に開かれたの幹事会で、阿賀野患者会の方針を確認・決定した。
 6月23日、原告は、裁判所に、早期に和解勧告をされるよう求める上申書を提出した。同日は、国と昭和電工からも同様の上申書が裁判所に提出された。
 
 草野裁判長が和解勧告
 7月8日午前11時30分から開かれた第5回弁論では、冒頭に、草野真人裁判所から和解勧告があり、次のような「和解勧告に当たっての所見」が朗読された。
 「当裁判所は、新潟水俣病の発生が発表されてから45年が経過し、被害者の高齢化が進んでいる上、原告ら以外にも多数の被害者が見込まれるという本件事案の特質に鑑み、和解による早期かつ全面的解決を図ることが、関係当事者の利益からして、望ましく、かつ、必要であると判断するに至り、関係当事者に和解を勧告する。関係当事者が裁判所の意のあるところを十分理解され、和解による解決に向けて真摯かつ積極的な努力を尽くされるよう切望するものである。」
 ただちに原告弁護団の齋藤裕弁護士と渡辺幹仁弁護士が法廷から飛び出し、裁判所脇の西堀通に待機していた原告や支援者の皆さんに「和解勧告」「解決に向けて大きく前進」と書かれた紙を掲げ、法廷の様子を伝えた。
 裁判長の和解勧告の後、山崎原告団長が立ち上がり、「原告団が要請してきた和解勧告をいただき、裁判長にお礼を申し上げます」と述べた後、6月26日に行われた「第1回新潟水俣病住民検診」では、当日検診を終えた19名全員が水俣病と診断されたことを紹介しながら、「私たちは潜在患者の掘り起こしのためにも被害地域全住民対象の健康調査の実施を強く訴えてきたが、被害者の実態を把握しない限り、水俣病問題の最終解決はない。健康調査の問題はこれから始まる和解協議の場でも粘り強く訴えていく」と訴えた。
 私も原告弁護団を代表して、「和解勧告を受けて、全被害者の救済と、早期かつ全面解決をめざして努力したい」旨述べた。昭和電工と国の代理人からも和解協議に応ずる旨の陳述があった。
 弁論の閉廷後、ただちに第1回目の和解期日が開かれ、ラウンドテーブル法廷で、原告と被告からそれぞれ裁判所に対して和解内容に関する具体的な説明がなされた。
 次回和解期日は、9月16日(午後1時45分)に開かれる。
   (弁護士 中村周而)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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