新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2011年3月2日

パワハラに関する裁判例の紹介

社会問題となっているパワハラ。
パワハラによってうつ病等の精神疾患となったり、自殺される方が後を絶たない状況にあります。
パワハラによって自殺したような場合、常に、労働災害や公務災害として認められるわけではなく、使用者側に損害賠償義務が発生するとは限りません。労災であれば、厚労省の認定基準に合致するかが問題となりますし、損害賠償であれば使用者側の安全配慮義務違反の有無が問題となります。
その際、よく問題となり、使用者側から反論がなされるのが、個体の脆弱性論です。つまり、普通の職員なら耐えられる程度の上司からの叱責であったが、自殺したのは、その職員がうつ病にかかりやすいような性格(メランコリー親和型など真面目すぎる性格など)であったためであり、上司からの叱責等と精神疾患の発症には相当因果関係がないとするものです。
この点に関し、公務災害の認定をめぐって争われた愛知県豊川市の職員の自殺に関する名古屋高裁平成22年5月21日判決は、当該公務が与えたストレスの強度をどのような労働者を基準として判断すべきかとの点について、「基本的には、同種の平均的職員、すなわち、職場、職種、年齢及び経験等が類似する者で、通常その公務を遂行できる者を一応観念して、これを基準とするのが相当であると考えられるが、そのような平均的職員は、経歴、職歴、職場における立場、性格等において多様であり、心理的負荷となり得る出来事等の受け止め方には幅があるところであるから、通常想定される多様な職員の範囲内において、その性格傾向に脆弱性が認められたとしても、通常その公務を支障なく遂行できる者は平均的職員の範囲に含まれるものと解すべきである。」としました。  わかりやすく言えば、真面目すぎたり几帳面な性格の人や、上司や同僚の評価を気にするタイプの人は、うつ病等にかかりやすいといえますが、パワハラを受けるまでの間、職務の軽減措置等を受けずに、特に問題なく職務を行ってきた人であれば、個体の脆弱性を問題とすべきではないという判断を下したことになります。
また、パワハラ等については、必ずしも、他の職員の目の前でなされるとは限らず、その立証が困難であるというケースがありますが、この事案では、自殺した職員に対するパワハラの具体的事実をそれほど多く認定できなくても、パワハラをした上司が、職場内においてでパワハラで知られた存在であったことから、緊張した仕事を強いられたことを重要視して公務災害を認めている点にも大きな特徴があります。

弁護士 近 藤 明 彦

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。

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