新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2012年5月14日

新潟市民病院医療過誤訴訟で和解成立

  全身麻酔による白内障手術を受けた際、病院側でモニターによる経過観察や心肺蘇生措置を怠ったため低酸素脳症となり、死亡した患者の遺族が、新潟市を相手に損害賠償を求めていた訴訟事件で、本年3月、被告の新潟市が遺族に謝罪すること等を内容とする和解が成立しました。
   Sさん(当時85歳)が白内障手術を受けるため新潟市民病院に入院したのは平成21年の夏。白内障の手術は一般に局所麻酔で行いますが、Sさんは脳梗塞の治療を受けたことがあるため、全身麻酔が選択されました。
  入院した日の翌日午前10時手術室に移動。10時11分に麻酔を開始したところ、Sさんの血圧が低下。10時20分頃から自動血圧計で測定不可の状態になり、昇圧剤が投与された後も血圧測定不可の状態が継続していましたが、担当医師はその原因を検討せずに10時43分に手術を開始し、11時34分に手術を終了。11時59分に抜管し、12時に麻酔が終了しました。
Sさんは心電図モニターを装着しないまま12時02分にリカバリー室に入室した後、血中の酸素飽和度が測定できなくなっていたにもかかわらず、12時10分に帰室の指示がありましたが、この時点から血圧が測定できない状態になり、ようやく12時22分にSさんに心電図モニターが装着。すでに心肺停止の状態でしたが、心臓マッサージが開始されたのは12時47分。心肺蘇生に効果のある薬のボスミンが投与されたのは12時52分でした。
  Sさんは、15時49分の検査で低酸素脳症と診断され、その後も意識が回復しないまま約50日後に死亡しました。この間、病院側からは、なぜSさんが低酸素脳症になったのか、納得できる説明はありませんでした。
  Sさんは手術を受ける前までは家族と一緒に元気に暮らしていました。白内障手術を受け、また普段の生活に戻れると思っていたのに、なぜ死亡しなければならなかったのか。妻のMさんと娘さん夫妻は、Sさんのカルテを病院から開示してもらい、Sさんが低酸素脳症になった原因を調べました。

一般に、心肺停止措置が続けば、脳は数分間で不可逆的なダメージを受け、低酸素脳症が発症することが知られています。しかし、病院側の対応でとくに問題なのは、手術終了後、まだSさんが麻酔から覚醒していないのに抜管し、さらに直ちに心電図モニターを装着させなかったこと、12時10分にSさんの帰室を指示した後、血圧が下がっていたのにモニターによる経過観察がなされず、その後、12時24分に心肺停止状態であることを確認したにもかかわらず、12時47分まで心臓マッサージやボスミンを投与する等の心肺蘇生措置が取られなかったことでした。
  Sさんの遺族が新潟市を被告に弁護士費用を含めて約3500万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を新潟地裁に提起したのは、平成23年4月でした。
  提訴から半年後、裁判所から和解の打診がありました。Sさんの遺族は、被告側が率直に責任を認め、謝罪する意向であることを評価し、和解を進めることを了承しました。そして、この3月、被告が本件医療事故について謝罪すること、遺族に対して賠償金として3000万円を支払うこと等を内容とする和解が成立しました。なお、担当弁護士は中村と黒沼でした(中村周而)。

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さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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