新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2012年2月2日

阿賀は訴える

(事務所誌「ほなみ」第110号掲載)

 新潟水俣病の半世紀にわたる闘いの記録を一冊の本にまとめようと昨年秋から取り組んで来た作業がほぼ終わり、1月中に出版できる見通しとなりました。

 水俣病による苦しみや偏見差別を乗り越えてきた被害者の訴えとミナマタの教訓をできるだけ多くの皆さんに知っていただき、全被害者救済に向けての今後の闘いに役立てようと阿賀野患者会や共闘会議が中心になって発行を計画中の本のタイトルは、「阿賀は訴える-こんどこそノーモア・ミナマタを」です。

 国と昭和電工を被告にして、173人の被害者が原告となって立ち上がったノーモア・ミナマタ新潟全被害者救済訴訟は、昨年3月3日、被告との間に和解が成立しましたが、その後も、新潟水俣病の全被害者の救済に向けての取り組みが続けられています。「阿賀は訴える」の出版も含めて、原告の皆さんが中心となって、裁判終了後も、全被害者の救済という志の高い目標に向かって活動を続けていることに心から敬意を表したいと思います。

 第二の水俣病といわれる新潟水俣病が発生した1965年から47年を経ようとしていますが、この間、被害者は、ノーモア・ミナマタ新潟訴訟を含めて三つの裁判闘争を余儀なくされました。それでも、新潟県内には、自分が水俣病被害者であることに気づかなかったり、水俣病に対する差別や偏見のために被害者であることを隠している多くの潜在被害者がいます。

 国の行政責任を認めた水俣病関西訴訟の最高裁判決を受けて水俣病特別措置法が制定され、2010年5月からこの法律に基づく救済申請の受付が開始されました。新潟県内でも毎月ほぼ30人以上の被害者が申請を行っていますが、昨年10月末までの新規申請者は1084人となり、今後さらに多くの被害者の申請が予想されます。

 救済申請の受付については、閣議決定で、「平成23年末までの申請の状況を、被害者関係団体とも意見交換の上で十分に把握し、申請受付の時期を見極める」とされていますが、今、もっとも心配されるのは、環境省がこの閣議決定を口実に申請受付の打ち切りを検討していること。しかし、今必要なのは、潜在被害者の掘り起こしのためにも行政の責任で被害地域の住民健康調査をすることです。 全被害者の救済を実現するためにも、申請受付の打ち切りをさせないようにしようと、かつての原告の皆さんを中心とした闘いが今年も続きます。

弁護士 中 村 周 而

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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