新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2008年4月8日

Tさんのこと

 Tさんは今年82才。痩せているものの骨太のがっちりした体格です。78才の奥さんと2人で公営住宅で暮らしています。
 若いころは家具づくりの会社で大いに腕をふるい、途中から大工の道を歩み、奥さんと3人の子供を育て上げました。
 しかし重い腰痛をかかえ、歳を重ねるにしたがい大工の仕事も減り、シルバー人材センターに登録してみたものの月5万円程度の収入しかありませんでした。奥さんも高血圧の持病があり働けません。
 Tさんは、「もう、食べていくには生活保護を受けるしかない」と思い、奥さんに相談しました。奥さんは強く反対しました。しかし、このまま死ぬわけにはいかない、生きていくにはこれしかないと話し合い、二人で役所に行き生活保護を申請しました。
 生活保護を受けていると、節約節約の日々です。自宅の小さな庭(空き地)にわずかなばかりの野菜を植え、少しでも食費を節約します。家具や電化製品の多くは、親せきや孫、さらに近くにある大学の学生さんから卒業時にもらったりしたもの。毎月何百円の赤字が出る出ないの生活です。
 今から3年前、生活保護費から「老齢加算分」とされる金額が減額・廃止され、Tさんの受取る金額は約10%減りました。夫婦二人暮らしで毎月何百円の赤字が出る出ないの生活では、この減額はとても痛いです。
 いまTさんが一番せつないのは、自分の兄弟親せきをはじめ多くの知り合いや世話になった人たちが高齢になりお悔やみをする機会が増えたのに、あるいは気の合う友だちや孫が遊びに来たいと言っているのに、“お金がない”ためにそれができないことです。最後のお別れを欠礼することが多く、とても惨めな思いをします。また、そんなことが重なると、周りの人と疎遠になり、だんだん一人ぽっちになっていくような心持ちになってしまいます。
 人間は他人との関わりをもって、初めて人間になります。わずかな生活保護費を減額することで、その人間らしさを奪い取ってしまう。その一方で、軍事費や道路建設などに莫大な税金が湯水のように注ぎ込まれています。
 Tさんは、人間性を回復するため、憲法第25条を真っ正面に掲げて、「老齢加算分」を元に戻せと裁判に訴えています。
                                       弁護士 金子 修

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