新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2014年6月23日

管理委託契約は解除できる-真光寺ヴィレッジ事件で新潟地裁が判決

 新潟県の五頭山麓にある民間の温泉付き分譲地「真光寺温泉健康村」(真光寺ヴィレッジ)の購入者(住民)23名に対して、管理会社(真光寺管理サービス)が管理委託契約に基づく共益費や水道使用料などの支払いを求めていた裁判で、5月27日、新潟地裁は、住民側の主張を認めて、管理委託契約は解除や更新拒絶がなされていると判断し、管理会社の請求の一部を棄却しました。

 管理会社が、分譲地の購入者に共益費や水道供給施設使用料など総額2062万円の支払いを求めて裁判を起こしたのは、平成21年8月。被告となったAさんら住民は、管理委託契約書には契約期間が3年と定められ、契約期間が満了する3ヵ月前に申し出れば、解約解除や更新拒絶をすることができると明記されており、すでに解除や更新拒絶の申出をしているから、管理会社の請求には応じられないと主張。これに対し、管理会社は、本件の管理委託契約は、冬の道路の除雪も含めて受任者である管理会社の利益をも目的とするものであり、被告ら住民は解除権を放棄していると解されるから、住民側の解除や更新拒絶は認められないと反論していました。

 4年余りの審理を経て出された今回の判決は、本件の管理委託契約について、管理会社の管理業務の大半は、会社や関連会社(野本建設)の所有する道路(私道)や水道供給施設等の公共施設の保守及び管理であったことから、「個別の分譲地の所有者の利益というよりも、分譲地全体の利益という側面」が強く、「受任者の利益をも目的とするものであるといえる」としながらも、「本件管理委託契約は、あくまで個々の分譲地の所有者との間で締結された個別契約であり、個別の契約書に記載されている内容のとおり当事者間で合意したものと認められる」と判断しました。そして、契約内容には、更新拒絶や解除を制限する旨の定めや、解除権を放棄する旨の定めはなく、契約締結の際もそのような説明はなかったから、被告らが解除権を放棄したとは認められず、被告である住民の更新拒絶や解除権の行使は、社会的相当性を欠くとか、信義則に反するとは認められないと判示しました。

 また、水道供給施設使用料について、判決は、本件分譲地内の水道水の供給は、野本建設が、簡易水道事業者の許可を得て行っていたが、平成5年3月頃、水原町外3ケ町村水道企業団に水道事業を統合することになり、水道法11条に基づき、水道企業団から給水が開始されることを条件とする簡易水道事業者の廃止許可を得たが、その後、野本建設が水道法違反の事実が発覚したり、事業の統合に多額の施設改善工事費用が必要になることが判明したため、水道企業団への事業の統合が実現しない状態が続いていたが、平成11年、県が、暫定措置として、野本建設の既設簡易水道配水池まで水道企業団が上水道を送水し、配水池以降の施設を簡易専用水道として取り扱いよう通知し、平成12年1月以降、この方法で給水が行われていること、平成19年3月に真光寺簡易専用水道運営協議会が設立され、平成21年2月まで7回にわたって協議会が開催されたが、管理会社が本件訴訟を提起したために休会になったと認定しました。しかし、管理会社による水道使用料の請求は、水道法6条2項、14条1項に違反し、公序良俗に反するという住民側の主張は認められませんでした。

 管理会社は判決に不服であるとして控訴をしましたが、住民側は、今回の判決を契機に、改めて運営協議会の再開を求める予定です。なお、住民側代理人は、当事務所の近藤、小川、中村が担当しました。(中村周而)

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さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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