2026年10月21日
カスタマーハラスメント対策が令和8年10月1日から事業主の義務に
1 労働施策総合推進法の改正法の施行
労働施策総合推進法の令和7年改正法は、令和8年10月1日から施行されました。
改正法の施行に伴い、①「カスタマーハラスメント」に対する防止措置と、②「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」に対する防止措置が強化されました。
カスタマーハラスメントの防止措置が事業主の義務とされた点について、厚生労働省(以下「厚労省」)のパンフレットから紹介します。
2 事業主によるカスタマーハラスメント防止措置の義務化
(1) カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)の定義
労働施策総合推進法33条は次のように定めています。
職場において行われる
① 顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の事業に関係を有する者の言動であって
② その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして
社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③ 当該労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの要素をすべて満たすことが必要です。
この判断に当たっては、言動の目的、言動が行われた経緯や状況(言動を受けた労働者の側の問題行動の有無や程度を含みます)、業種・業態や業務の性質、言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者とされる者との関係性などを総合的に考慮するものとされています。
社会通念上許容される範囲を超えるかどうかを判断する際には、事業主又は労働者の不適切な対応が、顧客等の言動の原因又は背景となっている場合があることにも留意する必要があります。そのため、当該言動だけを切り離して評価するのではなく、前記の諸事情について事実関係を確認することが重要です。
なお、カスタマーハラスメントに当たり得る言動には、対面での言動に限らず、電話、電子メール、SNS等のインターネット上で行われる言動も含まれます。
「施設の利用者」には、駅・空港・病院・学校・福祉施設・公共施設などを利用する者のほか、将来利用する可能性のある者も含まれるとされており、広範囲の顧客等がカスタマーハラスメントの行為者の対象となります。
(2) 改正法は、顧客等の言動により労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主に対し、①当該労働者からの相談に応じること、②適切に対応するために必要な体制を整備すること、③労働者の就業環境を害する顧客等の言動への対応の実効性を確保するため、その抑止その他雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けています(法33条1項)。
顧客等によるハラスメントについて事実関係を確認し、その被害を受けた労働者を当該言動から保護することが必要となります。これまでのように労働者個人の責任として放置するのではなく、事業場全体で防止措置を講じ、組織として対応することが求められるようになったといえます。
(3) 顧客等の言動で困っている労働者が事業主に相談し、又は対応を求めたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定められており、不利益な取扱いが禁止されています(法33条2項)。
(4) 事業主は、他の事業主が講ずる防止措置等の実施について協力を求められた場合には、その求めに応ずるよう努める義務を負います(法33条3項)。
自社の労働者等が他社の労働者に対してカスタマーハラスメントを行ったとされ、他の事業主から防止措置等の実施に必要な協力を求められた場合には、事業主は、その求めに応ずるよう努めることになります。
事実確認の結果、自社の労働者が他社の労働者にカスタマーハラスメントを行っていたと判明した場合には、事業主は、就業規則などの服務規律に基づき、その労働者に対して懲戒などの必要な措置を講ずることが望ましいとされています。したがって、顧客として行ったカスタマーハラスメントであっても、当該行為者が所属する会社の名誉・信用を毀損したことなどを理由として、事業主から懲戒その他の措置を受ける可能性があります。
3 カスタマーハラスメントの典型例
厚労省が発行する「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」をもとに、典型的なカスタマーハラスメントの事例として、顧客や取引先などの言動を要約して紹介します。
(1) 言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
① そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等とまったく関係のない要求
・性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求(たとえば、何度断っても、繰り返し執拗に名前や家族、年齢、住所や電話番号を聞かれたり、LINE交換などを要求されたりする場合などが該当すると思われます)
② 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
・契約内容を大きく超えるサービスを求めること
③ 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
・契約金額の大幅な値引きを求めること
④ 不当な損害賠償要求
・商品やサービスと関係のない損害の賠償を求めること
(2) 手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
① 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
殴る・蹴る・叩くなどの暴行、物を投げつける行為、故意に体をぶつける行為など
② 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
店舗の物を壊すとほのめかしたり、SNS等に悪評を書き込むとほのめかしたりして労働者を脅す行為、労働者のプライバシーに関する情報をSNS等に投稿する行為、労働者の人格を否定する言動、土下座の強要、盗撮や無断での撮影、労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報を本人の了解なく他人に暴露したり、その開示を強要し又は禁止したりする行為など
③ 威圧的な言動
大声で労働者や周囲を威圧する行為、反社会的な言動など
④ 継続的、執拗な言動
同じ質問を執拗に繰り返す、話のすり替えや揚げ足取りをして執拗に責め立てる、同じ内容の電子メール等を執拗に送り続けるといった行為など
⑤ 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
長時間居座ったり、長時間の電話で労働者を拘束したりする行為など
ここにあげられた例は、カスタマーハラスメントではよく行われる言動です。
4 カスタマーハラスメントに当たらない苦情
厚労省のパンフレットによれば、顧客等からの苦情がすべてカスタマーハラスメントに当たるわけではありません。客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた苦情は、正当な申入れであり、カスタマーハラスメントには該当しないとされています。
5 まとめ
事業主に防止措置が義務付けられたことにより、カスタマーハラスメントへの対応を被害労働者個人の責任に委ねるのではなく、相談体制の整備、事実関係の確認、被害労働者の保護及び再発防止を事業場全体で行うことが求められます。
弁護士 土屋俊幸
著者:土屋 俊幸
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パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。
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