2013年1月21日
させていただきます。
朝食を食べながらのテレビ。ニュースの中で就職活動中の大学生が「これから企業訪問をさせていただきます。」とインタビューに答えていました。何とも言えない違和感が沸いてきて、思わず、どうぞ勝手にしたらとツッコミを入れたい衝動をおぼえました。 ものの本では、「~させていただきます」は、相手の許可を得てそうさせてもらう場面(「説明してご覧」「それでは説明させていただきます。」)や、相手の意向によってそうさせてもらうと見なせる関係の場合(「先生のご厚意によって」出席させていただきます)に使うのが適切であり、そのような相手がいなかったり漠然としている場合に使うと、慇懃無礼な表現となります、と書かれています(『続弾・問題な日本語』72ページ)。 確かに、就職活動の企業訪問をする場合、その企業に許可を求めるために、「訪問させてください」と言うのは良いとして、そうでないテレビ記者や不特定の視聴者に対して使うのはやはり変で、慇懃無礼な表現と思います。 先ほどの本には、相手のことを考えずに自分の都合でそうするという含みを持つ、とも書かれています(同69頁)。企業訪問で言えば、「お宅の会社がどう思おうと、こちらの都合で訪問させてもらうよ」というニュアンスになるのでしょう。 「~させていただきます」という使い方が気になり始めたのは、何代か前の総理大臣がテレビ画面に向かって連発していた頃からで、「なぜ、国民に向かってそんなにへりくだる言い回しをするのか」と反発したい気持ちを感じるようになった頃からです。 「させていただきます」を含め、へりくだる表現が最近多すぎるように思います。企業などが作成した接客マニュアルの丸暗記の影響かも知れません。最近では、テレビのバラエテイ番組や歌番組などでの会話にもよく出てきます。 その人たちは正しい表現だと思って使っているのでしょう。しかし、大切なお客様や目上の人に対し適切な謙譲語を使うことは必要ですが、過剰なまでに自分を低めて話す姿勢は、かえって慇懃無礼な感じを与えますし、相手に話の内容を丸投げして自分は責任を取ろうとしないという態度とすら感じさせます。
日ごろ、法律相談で相談者の方と対話したり、依頼者と打合せしたり、対立する相手方と交渉したり、裁判官を説得したりすることを仕事をしている者として、自分の言葉が相手にどんな印象を与えるのか、注意していきたいと思っています。
弁護士 金 子 修
著者:金子 修
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