2010年6月3日
働く者のいのちが大切にされる社会へ ~大橋公務災害で知事が遺族に謝罪~
2004年に長時間労働を原因に自死した新潟県職員大橋和彦さん(当時34歳)は、2009年2月9日、地公災新潟県支部審査会の裁決を受け、公務災害と認定されました。その後、遺族、弁護団、組合は、本件の全面解決に向け、知事の謝罪を求めてきました。
大橋さんの命は残念ながら戻ることがありません。せめて、大橋さんの死を無駄にせず、このような悲劇を二度と繰り返さないようにするためには、知事自身が、本件の原因を真摯に受け止め、再発防止のために努力してもらいたいと考えたからです。
本年3月27日には大橋さんの所属の長である新潟県教育長が大橋さんのお仏壇・お墓をお参りし、3月30日には知事との面談が行われました。知事は、遺族に対し、「息子さんが、公務上の理由で亡くなられたことを残念に思います。申し訳なく思っています。」と謝罪した上で、「こういう事態を防げなかったことが本当に残念でなりません。いろんなサインが出ていたのを十分にキャッチできていれば、最悪の事態は避けられたと思っています。」と述べ、大橋さんが上司らに対して、苦しみを訴えていたことに対して適切な対応が取られていなかったことを謝罪しました。さらに、「事後処理もたいへん申し訳なかったと思います。ご両親の気持ちを必ずしも受け止められる体制にはなっていなかったと思います。」と述べ、遺族による公務災害申請に対して、所属部署や基金支部の調査が適切ではなく、大橋さんの人格を貶めるような調査がなされたことについても謝罪しました。その上で、「息子さんの死が無駄にならないような行政の運営を今後はしっかりやってまいりたいと思います。将来に大きな可能性があった息子さんを失ってしまったことは、県の損失でもあると思っています。大橋さんのような思いを絶対させてはいけないと思います。」と述べ、再発防止に向けた取り組みを約束しました。
知事は、その後の庁議において、遺族が知事に渡した要請文書を配布し、「この事故は誰かが少し注意していれば避けられた事故だった。二度と繰り返さないように心して職員の健康に留意して欲しい」と管理職に対して特別の注意を行ったとのことです。
大橋さんは、県職員として誠実な職務を全うしたとても責任感の強い人でした。このように真面目で誠実な人が命を失うようなことがあってはなりません。今回の知事の謝罪は、遺族にとっても誠意を感じられるものでした。 知事の謝罪が今後具体的な政策の中に活かされることを期待してやみません。働く者のいのちが守られることは最低限の人権であると考えます。
弁護士 近 藤 明 彦
著者:近藤 明彦
話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。
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