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2018年1月9日

嘱託殺人罪に感じた疑問

嘱託殺人罪という犯罪をご存じだろうか。典型的には、病気で苦しんでいる本人から安楽死を持ち掛けられて殺害してしまうような例である。

普通の殺人罪の法定刑は、死刑、無期または3年以上の懲役刑であるが、嘱託殺人は、6月以上7年以下の懲役刑または禁錮刑とされており、普通殺人罪の法定刑より大幅に軽い。窃盗罪が10年以下の懲役とされていることを考えれば、その軽さをわかっていただけるだろう。

上記の典型例だけを見れば、法定刑の違いは妥当のように思うが、現実の嘱託殺人には、被害者にはもともと死ぬ意思がなかったが、無理心中を執拗に持ち掛けて、同意をさせてしまったようなケースも含まれて運用されている。しかも、刑事事件においては、「疑わしきは被告人の利益に」の考え方が貫かれているため、本当に嘱託があったのか疑わしいような場合でも、嘱託殺人としてしか処罰できないことが起こりうる。

結局、嘱託殺人の法定刑は、普通殺人と均衡を失するというのが私の結論である。仮に嘱託殺人の法定刑を維持するのであれば、「嘱託」の範囲を前述の安楽死のような真摯な嘱託があった場合に限定しなければならないのではないかと思う。

被害者参加の代理人の事件を通じて、最近感じたことである。

弁護士 近藤 明彦

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。

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