新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2008年9月3日

立川反戦ビラ最高裁判決に思う

人は誰しも自分の思いや意見を人に聞いてもらいたいことがある。それが許されないことは大変な苦痛である。親に教師に上司に友人に自分の言い分を聞いてもらえなかったときの悔しさ、やるせなさは誰でも体験したことがあるだろう。
そして,人の願いや意見は,周囲の人間だけではなく、時に世の中や政治を動かす。C型肝炎の被害者たちが救済立法の制定にまで政府を動かした例は記憶に新しい。
これらの例からもわかるように、表現の自由は個人の尊厳にとって欠くことができない人権であり、また、表現の自由の保障なくして健全な民主主義は成立しない。
しかし,多くの人は自分の意見を広く伝えたいと思っても、それを伝達する手段がない。最近でこそインターネットが有効な手段として機能しつつあるが、個人がマスメディアを使って自己の意見を伝達することには限度がある。
時に、世の人達から煙たい目で見られがちなビラ配り、署名活動、街宣活動、集会、デモなどは、古くから誰もが安価に自己の意見や思想を広く伝達する手段として機能してきた。
アメリカがイラクに対する攻撃を開始した頃、国民の、いや世界中の過半の人達が、イラクは大量破壊兵器を所持していると思っていた。アメリカが一方的に正しいと信じていた。そしてその正義のためなら自衛隊をイラクに派兵してもよいとの世論が成立した。しかし今や、イラク戦争が正しかったという人はアメリカ国民でさえ少数とされているし、自衛隊の派兵についても、判断を誤ったとする意見が多い。
活発な議論があってこそ、世論は動き、そして真実に、あるべき方向に近づいていく。少数意見は、それが正しい意見であり、開かれた言論の場があれば、国民に浸透していく。
東京都立川市の反戦活動家が、自衛隊官舎に反戦ビラのポスティングをした行為を住居侵入罪として起訴した件について、東京地方裁判所が無罪の判決を下したのに対し、東京高裁はその判断を覆して有罪とし、本年4月11日,最高裁がその判断を是認した。反戦活動家のささやかな言論行為について国家が刑罰をもって制裁を行うことが確定した。
その活動家は、単に郵便受けにビラを投函しただけである。その行為を住居侵入罪とするのは一般人の感覚にもそぐわないばかりかビラ配りという国民に根付いた原初的・草の根的な言論活動を抑制するものである。この判決について批判的なコメントの中には、それでは商店や保険勧誘などのビラも処罰されるとの意見もあるが,正鵠を射たものとは言い難い。むしろ,政治的な言論であり、「pure speech」(純粋な言論)といえる行為について、少数者の言論を抑制することこそが大きな問題である。
最高裁は政治から独立し、人権を守ることにこそ崇高な使命がある。最高裁が法の形式的適用にこだわり、国民の草の根的な言論行為を抑制させるような判断を下した責任は重い。

弁護士 近 藤 明 彦

著者:

近藤 明彦話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の方の納得を最優先にし、依頼者の方から感謝されることを目標に頑張っています。個人的には、以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が非常に多く、そのことが大変に励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えられるからです。

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