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2019年8月30日

遺産の使い込みと改正相続法

(事務書誌ほなみ第126号掲載)

遺産相続についての紛争でよくみられるのが、遺産の使い込みに関する問題です。

簡単な例を挙げてみましょう。父Pさんは、1000万円の土地と1000万円の預金を持って亡くなりました。妻には先立たれており、相続人は、長男Aさんと長女Bさんの二人です。ところが、Aは1000万円の預金を、Pの死後に、全額引き出して自分の物にしてしまいました。

このような場合、土地の相続は、遺産分割手続によることになり、当事者の話し合いがまとまらなければ家裁の調停で話し合われることになります。ところが、これまでの法律では、Aが引き出した預金については、もはや遺産が存在しない以上、遺産分割の問題とはならず、Bの相続分が侵害されたことを理由として、地裁の訴訟手続において、1000万円の半額である500万円の請求する必要がありました。つまり、Bは、家裁における遺産分割の調停と、地裁における訴訟のつを行う必要があったのです。

改正相続法では、遺産分割前に相続人の一人により遺産が使い込まれるなどの処分がされた場合については、その処分された財産を遺産とみなすことができるとの規定を新設しました(民法906条の2)。このことにより、Bは家裁の遺産分割手続のみで、本件を解決できることになったのです。具体的には、家裁の手続きの中で、Aがそのまま預金を取得し、Bが土地を単独で取得して、双方1000万円ずつの財産を取得することもできますし、Aに預金を戻させて、預金と土地両方について、改めて話し合いを行うことも可能となりました。

ただ、注意が必要なのは、改正法が適用されるのは、あくまで、Pの死後に、使い込みがなされた場合だけです。現実の紛争ではるかに多いのは、Pの生前に、相続人の一人による預金の引き出しがなされるケースです。この場合に、預金の引き出しが、Pの了解を得てなされている場合には、生前贈与(相続の用語では特別受益といいます。)として、他の遺産とともに家裁の調停で取り扱うことが可能ですが、逆に、Pの了解を得ないで引き出された場合には、PのAに対する不当利得返還請求権が発生し、その半額をBが相続したものと考えられるため、理論上は遺産分割の問題とはならず、地裁における訴訟手続によるのが原則となり、この点は、改正法によって変更がありません。

この問題は、預貯金債権や損害賠償請求権、売買代金債権などの可分債権(性質的に価値を損なわないで分割できる債権)のうち、裁判所は、原則として預貯金のみを遺産分割の対象としていることと関係があります。しかし、遺産分割制度は、相続人の公平のための制度であり、そのためには、できる限り幅広い財産を遺産分割の対象とすることが望ましいと思われ、私は、将来的には、可分債権全部を原則として遺産分割の対象とすべきであると考えています。

弁護士 近 藤  明 彦

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