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2019年8月29日

遺産分割前の預貯金の払出し制度の創設

葬儀代や入院費などの支払いや生活費を払い出そうと金融機関に行ったら、亡くなった父母や夫名義の預貯金の払出しができなくなって、困ってしまったという方がいらっしゃるかと思います。

公正証書遺言があれば比較的簡単ですが、遺言書がない場合には故人(被相続人)の名義の預貯金の払出しを受けるには、金融機関から相続手続きのための書類をもらい、相続人の代表を決めて、相続人全員が署名し、実印を押し、全員の印鑑証明書のほか、被相続人の生まれたときから亡くなるまでの戸籍一式を取り寄せて、金融機関に提出する必要があります。

相続人の協力があっても、このような面倒な手続きをしなければなりませんが、相続人間で争いがある場合には遺産分割の話合いがまとまるまで、預貯金の払出しを受けることができなくなります。

預貯金の払出し制度の新設(民法909条の2)

相続法の改正で、預貯金を簡単な手続きで、相続人一人で払出しができる制度が新設されました。

[金融機関にある相続開始時の預貯金額]×1/3×法定相続分で計算した金額を政令で定める150万円の限度額まで、他の相続人の同意なく、一人で払出しを受けることができるようになりました。150万円の限度額は各金融機関についての限度額です。むろん、払出しを受けた預貯金は遺産の一部を取得したものとみなされます。

相続人が配偶者の場合には子どもがいることを証明すれば、預けている金融機関ごとに預貯金額に6分の1を乗じた額を、150万円を限度として払出しを受けることができるようになり、簡単な手続きで払出しを受けられます。

遺産分割前における預貯金払出しの保全処分(家事事件手続法200条3項)の新設

遺産分割前に、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費に充てるためなど、緊急の資金需要が生じた場合に、遺産に属する預貯金の払出しをする必要がある相続人は、家庭裁判所に申立をして、特定の預貯金の全部又は一部を、他の相続人の利益を害さない限り、仮に取得させる決定を出してもらうことができるようになりました(仮分割仮処分)。

この仮処分決定の申立をするには、遺産分割の審判又は調停の申立をしていることが必要です。

弁護士 土屋 俊幸

(事務所誌ほなみ第126号)

 

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