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2012年3月6日

ノーモア・ミナマタ新潟訴訟の和解成立から1年を迎えて

 

昨年(2011年)3月3日、新潟地裁で「ノーモア・ミナマタ新潟全被害者救済訴訟」の和解が成立して1年が経過しました。この間、被告の国と昭和電工は、和解条項に従って原告の皆さんに一時金を支払い、療養費や療養手当の支給を行っています。5月8日には松本龍環境大臣(当時)と高橋恭平昭和電工会長が新潟に来て責任とおわびを表明しました。それでは和解条項に定められたそのほかの「基本的取組」の実行状況はどのようになっているのでしょうか。 原告も含めた新潟水俣病の全被害者を対象とした介護保険サービスの利用者負担分の補助制度の実施や治療薬の開発に関する国の取組については一定の前進はみられますが、それ以外の取組については、進展状況の説明も含めて十分とは言えません。 被害者の福祉の充実の一環として国が約束したリハビリ訓練施設の設置については開設時期が依然としてはっきりしません。地域の振興、慰霊碑の設置や慰霊祭の開催を含むもやい直しの取組については、関係者の協議を開催することに向けた取組の進展状況についての説明もありません。 メチル水銀と健康影響との関係を客観的に明らかにすることを目的とした最新の医学的知見を踏まえた調査研究や、そのための手法開発については、和解条項では、「原告らを含む地域の関係者の協力や参加」のもとで行われることになっていますが、いまだに原告ら関係者に連絡が来ていません。これまで阿賀野患者会や新潟水俣病共闘会議、弁護団は、国や昭和電工に対して、これらの基本的取組を早急に実行するよう要請し、継続的に協議を行ってきました。また、全被害者救済の観点から、一人でも多くの潜在被害者が水俣病特措法の救済措置を受けられるように周知を徹底することを新潟県にも要請してきました。すでに新潟県内では1200人以上の方々が救済措置の申請を行っており、現在も毎月30人から40人の申請が行われています。ところが、細野環境大臣は、この2月3日、水俣病特措法の救済申請の受付を7月末で締め切るという発表を行いました。このような国の対応は、今でも多くの水俣病被害者が潜在していることが明らかな状況の中で、一方的に申請期限を設けて、「あたう限り」の被害者救済の責任と義務を免れようとするものであって、人道上からも絶対に許されません。また、水俣病特措法の判定結果については全く公表されず、救済対象にならなかった方への理由説明も不十分であるとの声も高まっていることも考えると、受付締め切りはなおさら問題です。

 阿賀野患者会を含む水俣病関係3団体は、3月5日に「ノーモア・ミナマタ新潟訴訟和解成立1周年にあたっての声明」を出し、国に対して、今回の7月末の締め切り決定を直ちに撤回するよう求めると共に、和解成立1周年を機に、国と昭和電工に対し、和解条項の「その他の取組」の進展状況を検証し、その実現に向けて引き続き協議するよう求めました。

弁護士 中村周而(新潟県弁護士会所属)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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